空間と距離【紫】

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家に入るのになぜかとても緊張した。





いつも開けているドアが重く感じて。


辰哉さんの靴を見てドキドキして。


家に辰哉さんがいるんだと思うと苦しくなって。





それはきっと、あの感情の名前がわかったから。









「ただいま、」


辰「おかえり！ねぇ見て！ラーメン作ったんだ〜」









キッチンに立っている辰哉さんは少し疲れ切った様子。


机にはラーメン。


インスタントラーメンに野菜を乗っけたのかな。









辰「俺仕事早く終わったからさ、作ってみたの！Aも疲れてると思ったから」


「っありがとうございます、嬉しいです、」


辰「ほんとに！？早く食べよーよ！」


「はいっ」









キッチンが大変なことになっているのは気になったけど、辰哉さんが苦戦しながらも作ってくれたことにとても嬉しくなった。





そんなところも含めて、好きになったんだろうなぁ。









辰「早く！」









手を洗って戻ると、椅子に座って待っていた。


その笑顔が可愛くて。


胸がぎゅーっとなって、息がしづらい。





笑顔だけでこんなにドキドキするもんなの…？









辰「A？」


「あっ、ごめんなさい、」








急いで椅子に座って手を合わせた。








辰「せーの」


「「いただきます」」









少しふーっと冷まして一口食べる。









「美味しいです…！」


辰「よかったぁ…」









大きさがまばらな野菜たちではあるけど、一生懸命作ってくれたんだなって伝わってくるし、味はとても美味しい。





辰哉さんって意外と料理できるんだな。









辰「康二とか舘さんとかに教えてもらって作ったんだ。後でお礼言っとかないとな」


「…片付けは、ちゃんとしてくださいね…？」


辰「…はい、」









なんてやり取りをしながらラーメンを食べた。


辰哉さんも「我ながらうまいな」と自分を褒めながら食べてた。





…忘れてた、


辰哉さんに伝えないといけないことがあるんだった。









「…あの、辰哉さん、」









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