教祖様の5人目の嫁

にじゅうご ページ26

『…そうね』


挑発的な笑みを浮かべて筆を動かす


丸文字で半紙に｢黄姫｣と記した


小｢本当にそうするなんて…｣


一｢きき、…縁起の悪い響きね｣


はぁ？可愛い響きでしょう


『これで良いかしら？私、早く教祖様に会わなきゃいけないの』



じゃあね、と襖を閉めれば中から恨み言がこだます


これぞ負け犬の遠吠えね

・

『…まだかしら』


自信満々に出てきたはいいものの、いつ来てきれるのか

そもそも来てくれるのかさえ分からない


外を眺めてぼーっとしていると襖を叩く音が聞こえた



『！、っはい』

この気配は…


童｢やぁ｣


『教祖様！』



やっぱり、私の教祖様は裏切らないわ


『待ってました！』


ウキウキで座布団を出して座らせると早々


童｢足、大丈夫かい？｣

心配そうにこちらを見つめる教祖様が目に映った


『へ？』


足って…私の？


童｢痛むんだろう？どれ、見せておくれ｣


そう言って私の着物を捲ろうとする教祖様


『ちょっ、ま、待って下さい！』


…気付いてくれたの？


『なんで…なんで分かったんですか？』

目を見開く私と同様、教祖様も目をぱちくりさせている



可愛い、、…じゃなくて！


教｢なんでって…Aは分かりやすいんだ、体の傾き方とか歩き方でね｣



分かりやすいって…


…今まで気付いてくれた人なんていなかったのに、


昔から我慢することが癖って、ちゃんと言ってって、みつりから散々言われてきた


その位、隠すのは上手だったのに


教｢他の皆の前では色々言われてしまうだろう？ごめんね、早く言えなくて｣


俯く私の頭を優しく撫でてくれる教祖様


無意識に私の瞳から涙が溢れてきていた


教｢？どうし、た…！っえぇ？！そ、そんなに痛むのかい？｣


とめどない涙を拭いながら焦る教祖様を見て1つ笑いを零す


『ふふっ、違うんです。…ただ、嬉しいだけ』


教祖様は首を傾げたけど、笑い続ける私につられて眉を下げながら小さく笑った

・

って言っても足の傷、見られたくないんだよなぁ


結構気持ち悪いし、教祖様とか卒倒しちゃわないかな？


『傷、気持ち悪いですよ？見ても大丈夫ですか？』


一応聞いておく


教｢？…あぁ、そうだったね。うん、大丈夫だよ｣


教祖様は何か呟いた後、綺麗な笑顔でそう言った


教祖なんて血とは無縁な身、、本当に大丈夫かしら？

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