先生と私の夢物語【3年A組】

高校初作品 ページ10

しばらくまた無言で黙々と絵を描く。
おにいの真剣な眼差し…
でも所々寝癖があるのはしょっちゅうで…





『……柊先生…出来ました』

柊『おっ?出来たか?
いいじゃん…
でも色付けないのか?』

『……おにいには黒が似合うから…これでいいんです…
おにいの優しさは…私が表現するので…』

柊『じゃあ…記念すべき渡海の高校初作品だな』

『……美術室に置いてていいですか?』

柊『お兄さんに見せないのか?』

『…恥ずかしいので嫌です』

柊『勿体ない』

『……おにいに見せてもまともな返事返って来ませんよ
もう6時になってたんですね…すみません…
絵を描いていると時間なんて忘れちゃうんです…』

柊『俺も何もすることないし、構わないよ
さ、片付けようか…鍵を閉めるぞ』

『はい』




片付けをしていると、急に息が詰まった。
胸が苦しくなって…フラついた…。
別に今は激しい動きをしてたわけじゃないんだけどな…。




柊『渡海?』

『……ふぅー……何ですか?』

柊『今…フラつかなかったか?』

『先生の見間違いですよ』

柊『…そうか
絵はー…そこの棚…使っていいぞ』

『わかりました』




大丈夫…ごまかせてる…と
私はまた表情を引き締める。




『……帰りましょうか、先生』

柊『…ああ』




美術室の鍵を閉めてる先生を置いて
私は先に廊下をゆっくりと歩く。
明日は…体育があるなぁ…。
坪井先生のお手伝いしなきゃな…。
あとは…柊先生からの"課題"か…。



柊『なーに考えてるんだ?』

『……明日の事です
明日何があって…私は何をしなきゃならないか…
考えていただけです…』

柊『明日か…
あ、俺からの課題忘れるなよ?』

『忘れてないですよ』

柊『……』




武智先生もかなり私の事を執拗に見てくるけど
柊先生も本当…かなり見てくるよね…。
武智先生の視線は嫌悪感しか抱かないけど
柊先生の視線は…何か全てを見透かされてしまいそうで怖い…。



『……柊先生…』

柊『何だ?』

『…さよなら…また明日…』



こういう時はすぐさま切り上げるが勝ちだ。
先生に背を向けると
そのまま階段を駆け下りた。

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