第９話 チョコレート ページ9
２日後、ホテルを出たすぐのところに、一昨日と同じようにセレソを連れたAがいた。
「あれ？ A？」
「···おはようございます」
「どうした？ もしかして、ずっと待ってた？」
「いえ··大丈夫です···。 あの··これ··よかったら」
出された紙袋を受け取り、中を見ると、オレンジ色の箱が２つ入っていた。
「妹さんへのお土産に迷っていたみたいだから···
···ここのチョコレートおいしいので、よかったらどうぞ···」
「えっ!? あ、ありがとう」
「···小さい箱の方はチャンミンさんがあのお店で買われた赤ワインに合うので、
よかったら試してみてください···」
「俺にも!? ありがとう···
なんか、ごめんね。 気をつかわせちゃって」
「いえ··· じゃあ、お気をつけて···」
「あっ!! 待って!!!」
２度と会えないと思っていたAに会えた···
ここでAとの繋がりを切りたくなかった俺は、慌ててAを引き留めた。
「これ·· 俺のID···」
ボディバックからメモを出し、急いでIDを走り書きをしてAに差し出した。
「まだ、いろいろ話がしたいし···」
「・・・」
「AのIDは聞かない。
Aが俺と話をしたいと思ったら連絡してくれないかな」
Aはメモと俺に視線をゆっくりと一往復させた。
「··わかりました···」
Aはメモを受け取ってくれた。
「··じゃあ、これで··· よいご旅行を···」
「あ、うん··· Aも勉強頑張って」
「··ありがとうございます··· 行こう、セレサ」
Aは俺にふんわり微笑むと、セレサと歩き出した。
Aは連絡をくれるだろうか···
Aとセレサが角を曲がるまで、俺はその後ろ姿を見送っていた···
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作者名：Miyu | 作成日時：2020年9月24日 11時
