第７話 自己紹介 ページ7
ピザ・パスタ・サラダ・肉・魚料理···
ワインに興味を持ち始めた俺のために、料理に合わせたワインまで···
彼女が選んでくれた料理は、どれもうまかった。
「うまいっ♪!!」
「それはよかったです···」
時々、俺との間に伏せているレトリバーにおやつをあげながら、彼女は俺の話に耳を傾けていた。
そういえば···
「名前は？ まだ、聞いてなかったね(苦笑)」
「あ··、セレサです···」
名前を呼ばれたと思い、伏せからお座りに体勢を変えたレトリバーを愛おしそうに見つめ頭をなでながら、彼女は答えた。
セレサ？ あれ？ 日本人って言ってたよな？
「セレサ？」
「···スペイン語で、さくらんぼです」
ああ、犬の名前か···(笑)
「君、さくらんぼ好きなの？ だからその名前を？」
「ん··· さくらんぼも好きですけど、この子は私が名付けたんじゃないので···
でも、きっと···そうですね··· この子の名付け親もきっとさくらんぼが好きなんだと思います」
そう言って彼女は、さくらの花の頃の陽ざしのようにふんわりと笑った。
その笑顔に一瞬ドキッとした俺は、ふと感じた違和感の意味を知るのは、随分あとになってからだった···
「犬の名前もだけど··· 君の名前は？」
「···私の名前ですか？」
「あぁ! 俺の名前もまだだったね、ごめん···
俺は、チャンミン··· シム・チャンミン」
「私は···Aです・・ 藤森Aです・・・」
会話をしていて気が付いた。
美術館では饒舌に絵の説明をしていたけど、素のAは人見知りなのかもしれない。
初対面の男と食事をしていること···
家族と離れて１人異国で暮らしていること···
そんなこともあって、今のAは人見知りと警戒心が混じっているように見えた。
そんなAは、俺が２６歳といえば、２０歳と答える。
妹が２人いるといえば、兄が２人いると答え、自分から自分のことを話すことはなかった。
それでもお勧めの観光地や店を教えてくれたり、俺の愛犬の話をニコニコと聞いてくれるAとの会話は、なぜか初対面とは思えないほど、心地よかった···
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作者名：Miyu | 作成日時：2020年9月24日 11時
