第34話 盲導犬 ページ34
＊＊＊＊＊ 回想 ＊＊＊＊＊
Aが日本に来て仕事にも慣れた頃、Aの部屋に行くとレトリバーがいた。
「セレソ？ イタリアから連れてきたのか？」
「ううん、セレソは２年前に死んじゃったんです…」
「じゃあ、新しい犬？」
「そうです」
「A、レトリバー好きなんだ。 でも、こいつはもう成犬だよね？」
「この子は７才だったかな?!」
「なんでそんな大きい犬にするんだ？」
「セレソもですけど、この子は盲導犬だったんです」
「盲導犬？」
「うちは昔から引退した盲導犬を引き取っているんです。
私が小学生の頃は、家に４頭いたこともあるんです」
「へぇ〜、そんなボランティアがあるんだ」
「子犬の頃から育てられないとか、名前を付けられないとか、残念なこともあるけど
盲導犬だったから、しつけはちゃんとしてていいですよ♪」
「なるほど…」
「ペットショップで気に入る犬を探すのもいいけど、人間の為に何年も働いたのに、行き場がないってかわいそうじゃないですか…」
「・・・」
「今の私は１頭しか買えないけど、この子も今まで頑張った分、これからは穏やかに暮らしてもらえればいいなぁて思って(微笑)」
「・・・」
「ボランティアとかチャリティーとか、そんな大きいことはできないけど、今の私ができることをすればいいかなぁって思ってます… ねっ」
そう言って、Aはその犬の頭をなでた。
「この子、名前は？」
「チェリーです」
「チェリー？」
「はい。 セレソはスペイン語、この子は英語…
そういえば最近は、さくらんぼが続いてますね(笑)」
・・・ できることをすればいい ・・・
俺が子供の福祉や環境保護に寄付をするようになったのは、それからだった…
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「オッパ、気に入った？」
「あぁ… こいつさ‥俺が名前つけていいかな？」
「どんな名前？」
「…ボッチ…」
「ボッチ？ さくらんぼ!! オッパ、かわいい名前つけるんですね♪」
ボッチよりボッチの洋服やおもちゃ選びに興味が移ってしまったソミンを横目に
俺はボッチをじっと見ていた。
俺がお前を守ってやる…
ちゃんと責任を持って守ってやる…
だから、安心して俺の家においで…
ボッチの真ん丸の瞳に俺は誓った。
それからの俺は、ソミンが妬くほどボッチを可愛がった。
ボッチは俺の癒しで心の痛みを埋めてくれる、そんな存在になっていった…
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作者名：Miyu | 作成日時：2020年9月24日 11時
