第４話 解説付き鑑賞 ページ4
旅行中という気分を壊したくなかった俺は、英語で話してもらうように頼んだ。
「君も旅行中？」
「いえ、私は留学です。
こっちの大学で勉強しています···」
「そうなんだ···
あの···ひとつ聞いてもいいかな？」
「はい···」
「気分が悪いんじゃないなら、どうしてあそこでうずくまっていたのかな？」
「あれは··· 絵を見てました···」
「絵を？ あれじゃあ、見ることできないんじゃない？」
彼女の言葉の意味を全く理解ができない俺に、彼女が提案を持ちかけた。
「少し、お時間ありますか？」
「時間？ ん〜、大丈夫だけど···」
「さっきの展示室まで戻ってもらっていいですか？」
「えっ!? うん···」
こうして俺は彼女と一緒に、この美術館で１番広いあの展示室に向けて歩き出した。
展示室に入ると彼女は、さっきうずくまっていた場所で正面の壁の１番高いところにある絵を指さした。
「あの絵、どう思いますか？」
「どうって···」
王子らしき男の子が馬に乗ったその絵は、よく見ると名画と言われるにはどこか変だった。
「ん〜、あの絵、何かバランスがおかしいというか···
あの男の子とか馬の足、短くない？」
「じゃあ今度は、ちょっと屈んで見てもらえますか」
「？ ···あっ!!」
言われるままに屈んで下から見上げると、さっきまで男の子が足の短いおもちゃのポニーに乗ったように見えた一見吹き出しそうになるその絵は、王子がサラブレットと空に駆け出す勇壮な絵になった。
「どうですか？」
「驚いたな··· こんなに変わるんだ···」
「あの絵は元々、宮殿の大広間に飾るために描かれたんです。
この展示室だと屈んで見た方が、あの絵の本当の姿が見られるんです」
「そうなんだ···」
「もっと高い位置に飾れればいいんですけど、ここの美術館には宮殿の大広間ほど大きい部屋は無いですから···」
「ふぅ〜ん」
、それから俺は彼女の解説を聞きながら鑑賞した。
ただ見るだけでは分からない絵画の奥深さと、鑑賞の楽しさを知ったような気になった俺は、ミュージアムショップで図録まで買ってしまった···
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作者名：Miyu | 作成日時：2020年9月24日 11時
