紫陽花物語～絆・Changmin ～ (ページ2)

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第２話　出会いページ2

その日は芸術を堪能することにしていた。

イタリアに来て美術館に行かない手はない。

開館と同時に入ったその美術館は、まだ平日の早い時間のせいか人はまばらで、有名な美術館の割にはラッキーなくらいじっくりゆっくり展示物を見ることができた。

「あれっ？」

次の展示室に入ると、部屋の中央でうずくまる女性がいた。

黒髪をお団子にまとめてるその女性は、微動だに動かなかった。

···具合でも悪いのか？···

他の人が見て見ぬふりをするなか、放っておけなくなった俺は声をかけた。

「大丈夫ですか？」

てっきりイタリア人だと思ったから英語が通じるか不安だったけど、声が届いたのかゆっくり俺の方に顔を向け

「大丈夫です」

と、少し恥ずかしそうに英語で答えた。

···あれ？イタリア人じゃない。日本人？中国人か？···

目を引くほどキレイとかかわいいわけじゃないけど、やわらかくフワッと微笑むその笑顔に、なぜか俺は目が釘付けになっていた。

「すいません、大丈夫ですから···」

「そうですか？」

「A!」

立ち上がる彼女に奥の扉から入ってきた男が声をかけた。

「今、行きます」

イタリア語で答えた彼女は、もう1度俺の方を向き

「本当に大丈夫です。ありがとうございました。」

と、ペコリと頭を下げ男の方に行き、あいさつとハグをしたあと一緒に奥へ消えて行った。

···あの男、どこかで見たような···

俺のその疑問はすぐに解消された。

その男は、手に持っていたこの美術館のリーフレットに載っていた館長だった。