先輩は俺がもらうんで 【二口堅治】

05.地雷 ページ5

練習の時も、休憩の時も。





ずっと先輩から目が離せない。






鎌先さんが先輩と仲良くしているのを見ると、
眉間にシワが寄るのが自分でも分かる。





「どんだけ好きなんだよ」





思わず呆れる。



今までの人生での嬉しさはMAX。



いつもは長く感じる部活も、すぐに終わった。




片付けを済ました部員達が帰る中、俺は先輩を待つ。




話しかけるには、再開した今日がベストだと思う。





夏風に押され、昇降口から出てきた先輩を止めた。





「あの狭間先輩……送ってきます」



一瞬驚いた顔を見せたけど、


「じゃあお願いしようかな

あ、あとAって呼んでいいよ
肩苦しいでしょ」


とOKしてくれた。

ついでにA先輩って呼ぶこともできるようになった。





夜道。




「そういや、名前何て言うの？」



「あ、二口っす」



「二口くんか……

あの、何かごめんね」




いつも見せていた あの笑顔とは逆に、
悲しそうな顔をした。



「二口くんだって行きたい高校あったでしょ？
私が勝手に 来て なんて進路決めちゃって」



「……いや、」



「それに、1年間顔出してなかったし」




短調のピアノ音でも聴こえてきそうなくらい、
悲しい声。



「……あの＿＿＿」



「今日はもういいや、ごめんね」



そう一言告げて、先輩は暗闇に姿を消した。







「……今日は帰るか」






俺の前を通る猫の目が、不気味に光っていた。

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