先輩は俺がもらうんで 【二口堅治】

20.ついに ページ20

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俺はこの2時間ほど、先輩のために尽くした。





「A先輩、籠持ちます」



「え、ありが……とう」





「俺も片付け手伝います」



「あぁ、うん ありがとう」





俺が人のために働くのは、自分でも珍しいと思っている。



声をかけるたびに驚いていたけど、
ありがとう って笑って言ってくれて嬉しかった。



そして今日の大一番。


先輩と帰ること。



今日は声掛けまくったから、
話せるモードではあるけど勇気がいる。



先輩が出てくるのを昇降口で待つ。





二度目の 送ってきます チャレンジ。





「A先輩、あの、送ってきます」



「ありがとう」




夏といってもそこまで暑くない。



時々、涼しい風が先輩の髪を揺らす。



いい匂いすんだよなー。



「なんか懐かしいね」



「はい」



「なんか二口くんって敬語の使い方面白いよね」



「……は？」



何を話すのかと思えば、
隣で急にケラケラ笑いだした。



「生意気なこと言ってるけど、
敬語 みたいな？

ほら、鎌ちといる時とか」



「まあ、一応先輩なんで」



「結局は先輩想いなんだよね、二口くんは」



あはは といつになく元気な先輩。



笑いの沸点が変な所にあるのか。



こんな先輩も新鮮。





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「じゃあ、私はここで」



綺麗でお洒落な家の前で止まる。



ここが先輩の家。



前は道で別れたから、家を見るのは初めて。





「……でか」



「いやいや、中入ったらそうでもないよ」



じゃあね と、手を振って俺に背を向ける。



少しずつ先輩と距離ができる。




扉が閉まるのを見届けて、
俺は自宅へ向かった。





俺は考えた。



家の明かりが点いていなかったから、
親は帰ってきてないんだろう。



家に一人でいるってどんなんだろ。



俺の場合、母さんか父さんのどっちかがいる。





A先輩に少しでも寄り添えたら。





早く、早く好きになってもらいたい。








代表決定戦まで、あと2日＿＿＿

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