第壱章 君は愛しいモノノ怪-07- ページ8
「つわはす君、こいつ腕ケガしてるから、治したげて」
「はいよ」
キヨさんにそうお願いされて、つわはすさんが前に出る。
「ちょっとごめんね」
つわはすさんが私の腕に触れて傷口を軽くなでた。
『あの、すみません…なんか』
こんな大したことのない傷まで他人に世話させて、申し訳ない。頭を下げるとつわはすさんは軽く口角をあげた。
「俺、実は鼬が憑いてるんだよね」
『イタチ、ですか?』
「そ、」
私の傷を確認したつわはすさんはリビングに置いてあった棚からガラス瓶を取り出す。10cmもない小さなガラス瓶には半透明なピンクがかったクリームが入っていた。
「つわはす君のモノノ怪は傷を治せるんやで! この薬もつわはす君が作ったんやで!」
レトルトさんがどこか誇らしげに言うと、クリームを塗布された私の腕はたちまち傷が消えていく。
『…すごい、』
「お粗末さまでした」
触って確認してみても、全く痛くも痒くもない。まるで傷なんか最初からなかったみたいだ。
「こいつの狐も抑えられそう?」
「この子にどれほどの狐が憑いてるのかわからないけど…まあ多少は抑えられるかな。でも一週間はかかるよ」
つわはすさんは何かを確かめるように私の目をじっと見つめる。恥ずかしくて思わず目をそらした。
「別に、九尾が姿を消した影響で調子づいた大したことない浮遊霊か地縛霊だろ。そんな時間かけなくてもいいって」
「それでもきっかり一日はかかる」
「そっか、」
キヨさんは何かを思案するように顎に手をやった。
「じゃあお前、もう今日は帰っていいよ」
キヨさんは私のほうに向きなおって、まるで野良犬でも追っ払うかのようにシッシと手を払う。
『え、』
「はあ?!」
「キヨ君、それはないって!」
「お前超最低だな!」
キヨさん以外の3人が口々にキヨさんにブーイングして、キヨさんは少したじろいだ。
「な…、お前らな、こいつは狐なんだぞ! 俺らはまだモノノ怪に耐性があるからいいけど、いつこいつに取り込まれるかもわかんねぇんだぞ!」
キヨさんが私を指さして、私は慌てて首を横に振る。
『っと、取り込まないです…!』
「自分のモノノ怪もうまく操れないで、何言ってんだか」
「操れないからこそ、1人にしてたら危ないんやろ!」
もーほんとにキヨ君は!レトルトさんが私の代わりに怒ってくれる。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます!頑張ってください!! (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです!たまにはいる挿し絵?も可愛いですね! これはもう更新しないのですか? まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮前 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時:2015年2月9日 17時