第陸章 獏は夢みし-02- ページ46
『―――――あの、キヨさんって、夜中じゅう起きてるんですか?ずっと?』
「起きてなかったら誰がお前の糞不味い悪夢食べてやるんだよ」
キヨさんは視線をゲーム画面にやったまま淡々と答える。まさかそんなことをさせてるなんて露とも知らず、一気に心臓がぎゅうと痛くなった。
『…私のせい、ですよね、』
「あーもーうるせえな!ちげえよ!もともとお前が来る前からこうだったの!生まれた時から!」
途端に私のめんどくさい雰囲気を感じ取ったのかキヨさんが私を睨みつける。
「いいか、よく聞けよ。俺のモノノ怪は夢を食べるんだ。それが仕事なんだよ。モノノ怪は基本的に人柱が起きてるときしか活動出来ねえの。だから俺は夜起きてるの。分かる?」
『…でも、そしたらキヨさんはいつ寝るんです』
そう問うた瞬間キヨさんの表情が少しだけ歪んだ。少し瞳を泳がせてから、まるで諦めたように笑ってみせるキヨさんはどこか悲しそうだった。
「別に獏は寝なくても平気なんだよ。それに……俺はいいの、どうせいい夢なんか見れねえんだから」
『どういうことですか』
「獏はな、俺の夢だけは寝ててもちゃんと食べてくれんだよ。偉いもんだよな」
キヨさんのいう意味がよく分からずに眉をひそめるが、キヨさんはそんなことお構いなしにベッドから降りてドアを開ける。
「ほら、さっさと自分の部屋に帰れ」
『…お邪魔しました』
有無を言わさぬキヨさんのその行為に素直に従って部屋の外に出れば、よくできましたと言わんばかりにキヨさんは私の頭をなでた。
キヨさんの熱は私に伝わって、その熱さはすぐに蒸し暑さに消える。
*
「キヨ君の夢?」
『うん、キヨさんは夢を見ないんだって。ぴーちゃんなんでかわかる?』
晩御飯が終わって二人で皿洗いをしている中、テレビを見ている他の三人に気づかれないように私はぴーちゃんにこっそりそう聞く。
「…あー、まあなんとなくは、ね」
『そうなの?わかるの?』
少し考えるそぶりをしてからそう答えたものだから、私は驚いてぴーちゃんの方を見た。
「ほら、獏って食べる夢が決まってるでしょ。その夢を食べられた人はその夢を見なくて済むんだよ」
『獏が食べるのって悪夢だよね?ってことはキヨさんはいつも悪夢を見てるの?』
「まあ、そういうことだね」
『…ねえぴーちゃ、それって、なん、』
そのままその理由を聞こうとすれば、ぴーちゃんは少し申し訳なさそうに私の唇に人差し指を当てる。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます!頑張ってください!! (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです!たまにはいる挿し絵?も可愛いですね! これはもう更新しないのですか? まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮前 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時:2015年2月9日 17時