第肆章 鼬の習性-04- ページ33
咄嗟に後ずさりをして出口の方へ逃げる。思いきり足をあげて久々に本気で走ると、すぐに出口が見えた。
自動扉から外へ出た途端腕を掴まれる。肌と肌が直接触れ、悪寒がした。
『…っ、や』
｢どこいくの?｣
『かえ、帰ります』
｢清算もしてないのに｣
手に持っていたカゴを取り上げられ、ふたりに腰を抱かれる。手が震えてうまく抵抗できない。
｢可愛いね｣
｢何か買って欲しいものある?｣
｢帰りも俺たちが送ってあげるからさ｣
せっかく髪を切ったのに、これでは前と変わらない。切った理由の殆どはキヨさんが私を女性と思わないようにだけど、この男っぽい髪型があれば多少は改善されるんじゃないかなんて馬鹿な期待も確かにしていたのだ。
『カゴ、あの、カゴを返してください』
｢いいって、俺たちが払うって言ってるじゃん｣
左右から腰と腕を掴まれ、逃げようにも逃げられない。ない力で引っ張ってもびくともしなかった。
必死に持っていた水晶の欠片がバラバラと床に零れる。
｢何してんの｣
低い声をさらに低くして、威嚇するようにそう言ったのはつわはすさんだった。
つわはすさんは鋭い目付きで3人を睨んで、ツカツカと私の前までやって来る。
｢彼女に触んないでもらえますかね｣
私の腰を掴んでいた二人を引き剥がして、つわはすさんは私を隠すように抱き締めた。胸元に顔を押し付けられ少し苦しい。
｢お前誰だよ｣
｢…彼女の連れだけど｣
3人の内のひとりが私に手を伸ばして、つわはすさんがそれを制する。
｢触んなって言ってるだろ…｣
瞬間ふわりと風が流れる。出口に近いとはいえここは店内だ。突如巻き起こった風に疑問を抱き上を見上げれば、風はさらに強くなっていく。
つわはすさんの髪が風に流され表情がはっきりと見える。彼は確かに怒っていた。
つわはすさんの私を抱く力が増して、風はさらにつわはすさんを中心にするように強くなる。
「なん、これ…」
「やば、なんかおかしいって!」
「なんなんだよ!?」
あまりにも強い風に、とうとう三人は立っていられずに床に伏せてしまった。けれど店内の商品は全く倒れない。
まるで誰かが意図的に風を巻き起こして、彼らだけを威圧しているようだ。
｢彼女に二度と近づくな!｣
もう言葉も発せないのか3人は必死に首を縦に振る。次第に風は止んで、男たちは逃げるように店内を後にした。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
