第参章 貉は二度騙す-06- ページ26
一度ボタンを掛け違えたら、そこからボロボロになるのが常だった。
今回だってそうだ。俺の勝手な感情であいつを傷つけた。そこからどう修復することもできずゴメンの一言も言えずに俺は部屋に籠っている。
時計を見れば既に次の日の午前で、俺は12時間近くくだらない理由で部屋に籠ってるのかと思うと自分にイライラしてしまう。
あいつは今までの女とは違う、なんてもう分かりきっている。
ただ俺が怖がって過剰に気持ち悪がって。
(…あいつ、もうこの家には居たくないかもしれないな、)
追い出したかったわけじゃない。女性という存在がストレスになるのは勿論だったけど、それでも俺が、俺たちが受け入れることであいつの居場所を作ってやりたかった。
それなのに。
コンコンコン、と控えめにドアがノックされ、顔だけドアに向けた。
「開いてるけど」
『……失礼します』
恐る恐る、という感じであいつが入ってきて、思わず身体を起こす。
カチャリとドアが閉められてあいつは俺に向き直った。俺が言わなくては。俺から、ちゃんと謝らなくては。
焦りは沈黙を増大させる。
『…あの』
その沈黙を破ったのは俺ではなかった。
「何」
『私、考えたんですけど、キヨさんは私がいるせいでイライラしちゃうなら、私はここに居ない方がいいですよね』
感情の読めないトーンで、ぽつりとあいつがそう言う。
「…別に、居ればいいだろ」
居てほしい、という言葉は紡ぎだせない。己の強情っぷりに腹が立ってくる。
『私、迷惑かけたくないんです。キヨさんがそんな状態なら、もうお世話になるわけにはいかないので』
じゃあ。それだけ言ってあいつは扉を開ける。
「、待て、おい、ちょっと」
急いで立ち上がったところでAの手を掴むことはかなわなかった。
こんな終わり方、だれも望んでない。P-Pも、つわはす君もレトさんも、Aも、……俺だって。
「待て、A!」
俺が扉を開けた時には、Aは廊下の角を曲がっていた。その先には玄関しかない。
「A! 行くな!」
そう叫んで角を曲がれば誰かにぶつかる。男にしては柔らかい感触、しかし。
Aの特徴でもあった黒くて長いきれいな髪は俺の視界には入ってこなかった。
「…お前、それ」
『ッ、キ、ヨさん…』
けれどそれは確かにAだった。男性のように短い襟足に、先程まではあったはずの髪に、驚いて思わず目を合わせる。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
