第捌章 件の一件-05- ページ8
「一緒に…周りたい人とか、いないわけ」
『え…？』
私が話の概要をつかめていないことに気付いているのか、キヨさんはガシガシと頭を掻く。
「だからさあ、せっかくの京都で、…終始俺と二人で、いいのかって」
気まずそうにそう言うキヨさんの不器用な物言いに、思わず笑ってしまいそうになる。私の初めての遠出の隣にいるのが俺でいいのかと、キヨさんは気を遣ってくれているのだ。
「別に、そいつとずっと周らせてやるわけにはいかねえんだけど…清水寺とかだけでも、」
『大丈夫です。私はキヨさんと周れて嬉しいですよ』
そう言って笑えばキヨさんはまた苦虫を噛み潰したような顔をする。嬉しいといわれて嫌だっただろうかと少し不安になったが、キヨさんは本当に嫌なことは嫌だときちんと言ってくれるので、きっと言うほどの嫌さではなかっただろうと勝手に決めつけた。
「なんだお前ら、何いちゃいちゃしてんだよお」
部長が私の肩を抱いて、私はびくりと肩を揺らした。昨日の夜のぴーちゃんの言葉を思い出して、一気に体が動かなくなる。
もしかしてブレスレットが効いていないんじゃないかと思うと怖くてたまらなかった。
『、あ、…いや、その、』
「イチャイチャなんかしてないですよ、だって俺ら兄妹ですから」
キヨさんは私の肩にかかっていた部長の手を掴み堂々とそう嘘を吐いた。
なんでそんな分かりやすい嘘を、と疑問に思ったが、その瞬間キヨさんの口から紫色の煙のようなものが舞い上がる。その煙は部長の口に入って、キヨさんは何事もなかったかのように部長の手を離した。
「…あれ、そうか、そうだっけ。わるかったな」
「いえ」
部長はにこやかにそう謝って、またみんなの輪に入っていく。
『なんですか今の、…なんで』
「これも俺のモノノ怪の力だよ。これはあんま使いたくなかったんだけどな、こう言っとけば二人で周りやすいだろ」
『獏って、夢を操る能力じゃないんですか？』
私がそう問うと、キヨさんは少し寂しそうな笑顔を向ける。
「夢ってな、その人の記憶なんだ。記憶が発展して願望になることもあるんだけど、大体は今まであった出来事を脳が思い返すための作業なんだ。俺は夢を操ってるんじゃなくて、その先にあるその人の記憶を操って、いやな現実を、悪夢を見ないように奥の奥まで仕舞ってるんだよ」
『だから、その記憶を捏造することもできるって、ことですか』
私がそう言って、キヨさんは頷く。
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赤の黒犬 - このほんわかした世界観とモノノ怪というダークな感じが相まって最高です。キャラの能力も個性を捉えているし、夢主の性格も女々し過ぎず、強がり過ぎずで超好きです! (2021年8月26日 2時) (
レス) id: 514ce3668f (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 初めまして！とても面白くて自分の好みです！もう更新されないのですか？急かすつもりはないのですが、続きを読みたくてコメントさせていただきました。私の中の大好きな作品です(*´ω`*) (2017年10月25日 1時) (レス) id: 65cdfd6af1 (このIDを非表示/違反報告)
はく - お久しぶりの更新ですね。あ、申し遅れました。自分ははくと申します。コメントはしませんでしたが、前から読ませていただいてました。文章の書き方が好きです。 (2016年8月31日 20時) (レス) id: c1ae332ddd (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - このお話とても大好きで何度か読み返したりしてます！ 久し振りの更新とても嬉しいですー(^o^) これからも頑張ってください！ (2016年8月31日 16時) (レス) id: 0930a1d22b (このIDを非表示/違反報告)
ぱっぱか(プロフ) - 久しぶりの更新、お待ちしてました…！この作品が本当に素敵で大好きなので、更新がまた始まるのがとても嬉しいです！日々の楽しみにさせていただきます。 (2016年8月31日 7時) (レス) id: 30b8db8aba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年12月14日 2時
