第捌章 件の一件-04- ページ7
「改札出たらこっちにまとまってー！点呼とるよー！」
幹事の3年生が京都駅で大きく手を振る。私たちはそれに従って各自の荷物を持って集まった。
20人近いサークルメンバーは、集まるだけで大きな人だかりになる。
私が輪の近くに集まると、私の荷物をぐいと引く人物がいた。キヨさんだ。
「おい、何があるかわかんねえんだから。俺の傍にいろよ」
『は、はい。すみません』
旅行前日、4人は私に教えてくれた。京都はどうやら、つわはす君にもらったブレスレットが効かない可能性があるのだということを。
『…ブレスレットの効果に、違いなんかあるの？』
私がそう問えば、ぴーちゃんがにこやかに答えてくれる。
「基本的にはそんなに違いはなんだけど、京都はちょっと特殊なんだ。京都にはね、三大妖怪をモノノ怪に持つ人が住んでいるから」
『三大妖怪？』
「うん。大天狗、酒呑童子、九尾のことだよ。その妖怪をモノノ怪として受け継ぐ家系が、京都に暮らしているのさ。そんな人たちが暮らしてるもんだから町の人たちも耐性がついてるというか、こっちでは有効なこのブレスレットが、あっちで効くかの確証は得られないんだよね」
ぴーちゃんがそう言って、私はふと思い出す。
『…そういえば、私がモノノ怪になったのも、その九尾？っていう人が原因かもっていう話になってなかったっけ』
「うん。実はね、三大妖怪の一人である九尾が、この間からずっと姿を消しているんだ。まあもともと三人ともちゃらんぽらんな人ではあるんだけど、こんなに長く姿を消したのは初めてで、だからモノノ怪の均衡が崩れている可能性は否めないのさ」
『九尾さんが見つかれば、私のモノノ怪がなくなることもあるってこと？』
「それはわからないけど…でもAちゃんのモノノ怪も狐だから、少なくとも力を抑えるコツとかは聞けるかもしれない」
『そっか…』
九尾の人が帰ってくれば、何かしらのヒントは得られるのかもしれないということか。三大妖怪なんていう凄そうな人が私に会ってくれるかどうかはわからないけど、京都に行けばその人たちの情報も得られるかもしれない、とかすかな希望をもてたことはうれしかった。
「今日は市内探索だっけか」
『はい。着物に着替えて八坂神社と清水寺とかその周辺探索して、夜は伏見稲荷で肝試しです』
私は幹事の方が作ってくださったしおりをみる。
「…Aはさあ、」
『はい』
キヨさんは少し言いづらそうにため息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤の黒犬 - このほんわかした世界観とモノノ怪というダークな感じが相まって最高です。キャラの能力も個性を捉えているし、夢主の性格も女々し過ぎず、強がり過ぎずで超好きです! (2021年8月26日 2時) (
レス) id: 514ce3668f (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 初めまして！とても面白くて自分の好みです！もう更新されないのですか？急かすつもりはないのですが、続きを読みたくてコメントさせていただきました。私の中の大好きな作品です(*´ω`*) (2017年10月25日 1時) (レス) id: 65cdfd6af1 (このIDを非表示/違反報告)
はく - お久しぶりの更新ですね。あ、申し遅れました。自分ははくと申します。コメントはしませんでしたが、前から読ませていただいてました。文章の書き方が好きです。 (2016年8月31日 20時) (レス) id: c1ae332ddd (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - このお話とても大好きで何度か読み返したりしてます！ 久し振りの更新とても嬉しいですー(^o^) これからも頑張ってください！ (2016年8月31日 16時) (レス) id: 0930a1d22b (このIDを非表示/違反報告)
ぱっぱか(プロフ) - 久しぶりの更新、お待ちしてました…！この作品が本当に素敵で大好きなので、更新がまた始まるのがとても嬉しいです！日々の楽しみにさせていただきます。 (2016年8月31日 7時) (レス) id: 30b8db8aba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年12月14日 2時
