【歌い手】スクールライフ＊私がいて君たちがいた＊Ｐａｒｔ２ (ページ18)

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出会い～過去編～ページ18

今日は保体の授業もなかったし、帰宅部の私はジャージを持ってきていなかった。

だから、目の前の男の子の問いかけに首を横に振る。

「そっか。じゃあそれ着て帰っていいよ」

恩に着せるわけでもなく、ただただ明るく笑って言った彼は、とても眩しく見えた。

「ぼく、そらる。スズムが言ってた『ろん』って君のこと？」

首をかしげて聞く彼に、黙って頷く。

もう涙は止まったけど、まだ上手く声を出せる自信がなかったから。

「なんかね、ろんがいなくなったんだけど、知らない？って聞かれたから探しに来たんだ」

もう一度、大丈夫だった？と聞いてくる彼。

大丈夫なワケないじゃん。

こんなにずぶ濡れで、髪も顔もくしゃくしゃで。

せっかく両親がかわいく産んでくれたのに、これじゃ台無しだ。

「あのさ、ぼくじゃ頼りないかもしれないけど、ぼくが守るから。

　だからさ、今度こんな風に呼び出されたりしたら、ぼくに言ってね？」

基本的に他人を頼るなんてことは、私のプライドが許さないからしない。

私は、なんでも自分で出来て、他人の前でなんて絶対泣いたりしない自分が好きだった。

気高くて、自分に素直で、自信家の自分が。

だから、そんな私に風当たりが強いのも仕方ないと思ってた。

上辺だけの友達なんていらない。

そんなものは、偽善に過ぎない。

そんな風に思っていて、友達ごっこで楽しんでいる人達を見下してた私がハブられるのは、

ある意味当たり前だと思ってたし。

だけど、やっぱりこういうのはキツかったのかな。

そらるの申し出に、気付いたら頷いてる私がいた。

今日初めて会ったような、年下の彼に縋って泣いていた。

子供のように泣きじゃくる私を、そらるはぎゅっと抱きしめてくれた。

優しいけどしっかりと私を包み込んだ右腕と、あやすような手つきで背中をたたく左腕。

いつか小さい時に、お父さんにやってもらったみたいに安心した。

「じゃあさ！！毎日会いに行っていい？」

「……うん。でも、あんまりしつこいのは嫌だな」

「あははっ！ろんって意外とわがままなんだ」

「うるさいわねっ！もう、嫌いっ！！」

「ごめんってば」

こんなにわがままな私に、こんなに話しかけてくれたのは、君だけなんだよ？

こんな状況なのに、こんなに笑顔でいられるなんて。

君のおかげだね。

「……ありがとう」

「ん。どーいたしまして！！」

「…やっぱなんでもない」

「んと、ツンデレ？」

「うるさい！！」