【歌い手】スクールライフ＊私がいて君たちがいた＊Ｐａｒｔ２ (ページ16)

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会いたかったページ16

「ろーんさんっ」

お昼の日差しが暖かい時間、私は誰もいない図書室の窓際で、ついウトウトしていた。

そんな時、突然かかった悪戯っぽい声と背中にかかるわずかな重み。

そして、私の首に優しくまかれる、細いけどしっかりとした腕。

その全てがここにあるハズのないもので、まだ目覚めきっていない頭と昔の記憶とが相まって…。

「混乱してる？」

……この笑いをふくんだ声と、私の考えてることをさらりと言い当てる……

「そ、らる」

「ん！正解。ろんさんおはよ」

「…………なんでいるのよ」

中学の頃に知り合って以来、執拗に絡んでくるこの男はそらるだ。

けど、高校で別れて…。

私がこの学校に進学を決めたときには、「僕もそこ行く」とか言ってたくせに、

都内屈指の進学校から推薦が来て、そこに入学したはずだった。

私の受験間際には、あんなに密だった交流も途絶えなぜか距離を置かれていた。

「そんな冷たくしないでよ。寝起きで機嫌が悪いのは分かるけどさ」

……違う。

そうじゃない。

なんでよ。なんでいまさら。

「ふふっ。ろんさんが俺に会いたいって言ったんじゃん」

そう言って笑う彼は、あの頃より確実に背が高く声も低く、『男の人』に成長していた。

けれど、それはあの頃の彼でもあって、

「………っ」

泣きたくないのに泣いてしまった。

そらるの前で泣いたのはこれで２度目だ。

１回目は出会った日で、２回目は……今。

「泣かないでよ」

そう言って、今度は前から抱きしめてきたそらる。

優しいけどしっかりと私を包み込んだ右腕と、あやすような手つきで背中をたたく左腕。

あの時と変わらない腕の中はとても温かくて、さらに泣きそうになる。

甘えたくなんかないのに、甘えてしまいたくなる。

「…ごめん。嘘付いた。俺が……ううん。ぼくが会いたかったんだ。ろんさんに」

あやまらないでよ。そらるは悪くない。

悪いのは私。知らない間に、あなたを傷つけた。

「やきもち妬いて、ごめんね」

私の方こそ、いつまでも忘れられなくてごめん。

そう謝りたいのに、肝心の声が出ない。

出てくるのは、嗚咽と、今まで溜めこんだ涙だけだった。