監督にご報告*F9 ページ5
卓也side
開幕戦終了後…
「監督、ちょっといいっすか」
「どうした?」
「…あの」
「…なんかあったか?」
「あったというか…」
「なんだ歯切れが悪いな」
「…その、」
やばい、言おうと思って色々考えてきたのに、
いざ監督を目の間にすると…忘れた。
「…Aか?」
「っ。あの…Aと、付き合っています」
「…そうか」
告げると、監督は…優しい顔をした。
初めて見る顔だった。
「本当は二人で言いに来たかったんですけど時間なくて…
まずは俺から伝えることになりました」
「そうか…開幕まで待ってたんだろ」
「はい…けじめ、として」
「…Aの事、考えてくれてありがとう」
「いや、俺が」
「きっと、Aはその方がよかった」
「…」
「…遠距離は、大変だろう」
「はい」
「卓には負担になるけど…
Aの事、支えてほしい」
「…」
「俺が言うのもおかしな話だけどな」
「お父さんなんだから普通ですよね」
「卓…?」
「俺、監督にも言ってるつもりですけど、
Aのお父さんに言ってます」
「…そうか」
「はい。遠距離で辛い思いはさせます。
でも…支えます。ちゃんと…幸せにします」
「…頼んだぞ」
「はい」
挨拶に来いと言われていたから、
てっきり怒られると思っていたけれど…
受け入れてくれた。
「そんな緊張しなくてもいいだろ」
「いや、しますって…」
「別に怒らないよ」
「お前はダメだとか言われたら…」
「言わないよ。Aが選んだならそれでいい」
「…」
「俺は…Aと卓を信じてる」
監督と言うより、やっぱりお父さんだ。
Aの幸せを願っている…お父さんだった。
「泣かせたらわかってるな」
「…え」
「俺に電話してくるように言っておくから」
「ちょっと待ってください」
「裏切るような事があれば
スタメンから外すからな」
「職権乱用。
それに…ないっすよ、裏切ることなんて」
「裏切ったら社会的に抹消されそうだな」
「…確かに」
「卓に限ってないだろうけれどな。
本当に…幸せにしてほしい」
「はい」
「…子どもはこうやって巣立っていくんだな」
「…」
「違うな。子供はこうやって取られていくんだな」
「…言い方悪いっす」
「ははは!幸せにな」
「ありがとうございます」
こうやって、俺の監督への報告は終わった。
裏切るなんてありえない。
幸せにする。大切にする。
Aが笑っていられるように…
(俺が守っていく)
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作者名:ゆき | 作成日時:2019年6月23日 17時