29-落ちてこい ページ10
慎吾side
「慎吾君！」
「そない、大きい声ださんでも」
「なんか、久しぶりな気がする」
「そうか？」
「だって、前93年飲み行けなかったもん」
「あぁ、仕事入った時な」
「…久しぶりだね」
「久しぶりやな。お疲れ様」
「ありがと」
開幕と同時に、Aがこっちに帰ってきた。
結構メディアにも取り上げられていて、
ファイターズのファンからも愛されていて…
選手からも愛されていて…
ちょっと…というか、かなり…嫉妬した。
すぐにAは北海道から帰ってきた。
ここ数か月、ファイターズに尽くし過ぎて…
仕事が溜まっているとの事だった。
やっとお互いのオフが重なって、
ご飯に行けることになった。
いつも通り、俺が車で迎えに行く。
そして、冒頭の会話や。
いっぱり犬みたい。
「相変わらず、忙しそうやなー」
「ん〜まぁ、休んでたからね」
「…無理してへん？」
「してないよ」
「Aは嘘つきやからな」
そう言うと、笑って誤魔化された。
あぁ、きっと疲れてるんやろうな。
「いつもの所でいい？」
「ん、いいよ〜烏龍茶美味しいかな？」
「どやろ、酒はうまいで」
「…飲めない」
「飲んだら、大変やもんな〜」
「…飲みません」
「そうしてください」
そう言えば、楽しそうに笑った。
表情はミラー越しにしか見えないけど…可愛い。
信号で止まったついでに頭を撫でる。
「な、にっ…」
「ん〜なんとなく」
手を離すとき、そっと耳に触れてみた。
目を細めるAをミラー越しに見る。
あぁ、ホンマに可愛い。
なんやねん、可愛いやん…。
それからすぐにいつもの店についた。
2人で烏龍茶を頼んで…適当に飯を頼む。
どーせ、Aも俺もそんなに食べへんし…
いつも決まったものを頼む。
「Aはさ、」
「ん〜」
「好きな人とかおるん？」
「っ…なに…急に」
「気になった」
「…気になったって…」
「気になるやん」
「…やだ、教えない」
「おるんや」
「…」
「無言は肯定」
ぷいっとそっぽを向く。
でも、その表情は…照れている時の顔。
少し、うぬぼれてもいいのだろうか。
「なぁ、A」
「なに」
「そんな不機嫌そうな顔せんといて」
「だって…慎吾くん、今日なんか変」
「変って」
「…いじわるな気がする」
「…気がするやないねん、いじめてんねん」
→
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年1月14日 20時
