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慎吾side
「結構田舎だね」
「せやろー、俺この感じ好きや」
「うん…私も好き」
中には入れないから、外からグラウンドを見る。
周りには人も何もなく、グラウンドまでは少し遠いけど、見晴らしのいい穴場スポット。よく近所のおっさんたちがここから見てたなー。なんて思い出した。
「車戻らんくて平気か？寒ない？」
「平気。今日の慎吾くん優しくて怖い」
「そんなの、毎日優しいわ」
「えぇー、いつも笑って馬鹿にしてくるくせに」
そう言って、俺の少し前を歩く。
暗い中1人、女の子が…泣きそうな背中をして、歩いている。その背中になんて声をかけようか。
車の中でも、あのことについては触れてこなかった。急に泣き出すかと思ったのに…俺に会ったら泣いてくれるんやないかって…弱いところ見せてくれるんやないかって…しょーもない自信があった。
「A」
「んー、」
「なんでなん」
「え、なにが？」
「なんで泣かないん？電話では泣いてたのに…会いたいって言ってたのに…なんでそんなに強がるん？」
「泣かないよ」
「なんで？」
「なんでって…もう泣ききったよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ」
「なら、なんでそんなに悲しそうな顔するん。今のAは…出会った時のAや」
あの暗く落ち込んだ表情。迷子になってるAを見捨てられなかったのはその表情の裏を見たかったからかもしれない。
「泣いたって…忘れられないから」
「…」
「泣いたって忘れられないの。何度も何度も夢に出てくるの、泣いたって…変わらないの」
「A」
「もう大丈夫だから、泣かなくても」
「A、こっち向いて」
「なんで、」
「ええから、こっち向きや」
渋々といった顔をしながらこっちを向くA。
そんな名前に向けて大きく手を広げる。
「電話で言ったやろ？甘やかしたるって。ほら、おいで」
「いや、行かないよ」
「ここなら撮られる心配ないし。隣梨園やから」
「…なに、泣かせたいの？」
「泣かせたいというより…俺がおるで、もう大丈夫やでって伝えたい」
「な、んで、慎吾くんは」
「なんで？なんでやろうなー？Aには幸せになってもらいたいからかな」
「…慎吾くんが優しい」
「やから、俺はいつでも優しいって。A…」
「…」
「甘えられる時に…甘えとき」
そういえば、ゆっくりと俺の腕の中に来た。
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年1月14日 20時
