33-守りたい人 ページ19
慎吾side
いつもと違う朝を迎えた。
いつもと違うベッド…。
凄く良い香りがする…。
なんでやろう。
そんな事を思っていたら…
昨日の事を少しずつ思いだした。
あぁ…俺、Aの家に泊まったんやった。
腕の中にAを抱きしめて寝て…
「…A？」
抱きしめて寝ていたはずのAがいない。
あれ…一緒にいたはずやのに。
段々と頭が覚醒してくる。
腕の中にも隣にもAがいない。
慌てて起き上がる。
何もない部屋…もちろんどこにもいない。
ベッドからでてリビングに向かうと…
「あ、おはよ」
部屋着のままキッチンに立っているA。
どこかに行ったかと思った。
どこかで泣いていると思った。
…俺の腕の中に帰ってこない気がした。
そう思ったら、俺はAの腕を引っ張り抱きしめた。
「慎吾君？寝ぼけてる？」
「嫌でも頭冴えたわ。
…なんで隣におらんの」
「いや…お腹空いてるかなって」
「せやったら起こして」
「凄い気持ちよさそうに寝てたから」
「…隣にAがおらんとか…
マジ焦った」
「ごめん」
「思ってないやろ」
「思ってる」
「…はぁ、あほ」
抱きしめた手を緩めておでこをド突く。
まあまあな力で。
「った！」
「あほにはこれくらいでええやろ」
「あほって…」
「…寝れた？」
「寝れたよ。慎吾君いたから」
「…そっか」
「慎吾君は寝れなかったよね」
「寝れたけど、寝起き最悪」
「…ごめんてば」
「もうええよ」
「…お詫びもかねて朝ごはん作ったから」
最近家開けていたから食材なくて…
と言って作っているのはシンプルな朝ごはん。
Aが作ってくれたって所で嬉しい。
顔を洗って、戻ってくれば、朝ごはんが準備されてて…
2人でご飯を食べる。
あぁ、なんかこんな日が来るなんて思ってなかったら、
正直どうしていいかわからない。
「…慎吾君が静かとか…なんか変」
「変ってなんやねん」
「いつもたくさん喋ってくれるから」
「遠回しにうるさいって言ってるやろ」
「言ってないよ」
「どうだか」
「もー、慎吾君いつも突っかかってくる」
「やってAいじめんの楽しいから」
「…なにそれ」
「なんでも。俺の楽しみ取らんといて」
そう言いながらご飯を食べる。
Aは昨日の事がなかったかのようにふるまってるけど…
実際はどうなんやろ。
いや、怖いに決まってる。
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年1月14日 20時
