24-君の声 ページ1
慎吾side
夜、部屋でゴロゴロしていた時、上沢から連絡があった。
『Aがファイターズの職員にストーカーされてて、襲われた』
特に怪我はなかったらしい。でも…襲われたことは特に世間に公表することはないとの事で…
これがいつも通りの対応やっていっていた。
俺に教えてくれたのは、93年組でAの事情を共有するのと…明後日、Aは東京に来るらしく…何かあったら(なくても)フォローしてほしい、と言う事だった。
そんな事よりも、何してんねん。何で守られへんかったん。
言いたいことはぎょうさんあった。
でも…すぐにAの所に駆け付けられない俺が…何も言う資格はない。
守ることも、慰めることも…できない。
「一番初めにあって…一番近い距離にいたのに…なんで一番遠いんや」
この距離が心の距離な気がして…悲しくなった。
最初に逢った時は、好きになる予定なんかなかった。
でも、何度も会うにつれて…Aに惹かれていた。
それやのに…なんでっ。
イライラしている時に、スマホが鳴った。電話…？
画面を見ると、そこには、今俺の心を乱している…Aの名前。
いつもなら、電話してもいい？と連絡をしてくるのに、なんで…。
すぐに通話ボタンを押した。
「A…？どした？」
『…慎吾君？』
「俺に電話したんやからそうやろ」
『慎吾君…』
「…ん？」
上沢から聞いた事もあり、なるべく優しい口調で声をかける。
今、どんな表情をしてんねやろう…今、どんな事を考えているのだろう。
泣いているのだろうか、泣き止んだ後なのだろうか。
そんな事も、わからない。
『急に、電話してごめん』
「ええよ。暇してたし」
『…声、聴きたくなった』
耳元には、寂しそうな…少し、甘い声が残った。
あかんて…今の俺には。
「…今一人？」
『うん…家』
「…怖い？」
『…聞いた？』
「まぁ…」
『…こういう事、時々あるから』
「…やからって…怖くないなんて事ないやろ」
『でも…』
「でも、やない。何度あったって、怖いもんは怖いやろ」
『慎吾君っ』
「今は俺しか聞いてない。あいにく声しか聞こえへんから…泣いててもわからへん…」
『こわ、い…っ』
そう言って、電話の向こうで泣きだしたA。
あぁ、自分で泣かせておいて…辛い。
なんで、こんな時に抱きしめられへんのやろう。
俺は…こういう時に、好きな人の傍に俺へんのやろう…。
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年1月14日 20時
