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28-おはよう ページ8

遥輝side


「おはよ…」

「おはようございます…凄い寝癖ですよ」

「…顔洗ってくる」

「朝ごはん用意しておきますね」



朝、おはようという相手がいる。
今まで…いなかったわけではない。
けど、こんなにも嬉しいと…幸せやな〜
って思うことは初めてだった。

凄い寝癖と言われた髪を整え顔を洗って、リビングに戻る。



「今日も美味しそうやな…」

「ありがとうございます。
ご飯、食べられますか?」

「食べる」



朝からちゃんとご飯を用意してくれる。
アスリートはご飯が命です!って言って、気合を入れている。

まぁ、ただ料理が好きなんかな〜って思う所はあるけど。

使われていなかったキッチンにAちゃんがいると思うと…
やっぱり嬉しくなって…後ろから抱きしめる。



「ちょっ…遥輝さん!」

「ん〜えぇ匂いするんやもん」

「だからって、」

「…照れてるん?」

「照れてないです」



そう言うAちゃんの耳は赤い…。
今まで抱き付いたって、照れなかったのに。

俺は嬉しくなって、もっと強く抱きしめた。



「可愛い」

「っ…耳元で、話さないで」

「どーしたん、いつも照れへんやん」

「知らないですよっ。もう、離してください」

「えぇ、もったいない」

「もったいないって何ですか」

「折角、傍におれるのに」



一瞬だけ、俺のAちゃんになった気になってる。



「いつも傍にいるじゃないですか…」

「…」

「…何か言ってください」

「…ん〜、Aちゃんはずるい女やな」

「どういう意味ですか」

「なんでも。さて、飯食って試合行くか〜」

「遥輝さんって本当に自由!」




もう一回だけ、強く抱きしめてAちゃんから離れる。
すっぽり収まっていた小さい体は、俺から離れて朝ごはんを準備する。

その耳はやっぱりまだ赤かった。




「可愛い…」




この時間を続けるためにはどうしたらいい。
ぼけっと考えながらテレビを付けたら…丁度CMにAちゃんが出てきた。


さっきまで自分の腕の中にいた女の子が一気に遠くに感じた。
トレーナー的な立ち位置で一緒にいたから、歌手だという事を忘れてしまう。

テレビの中の可愛いAちゃんに無性にムカついてテレビを切った。



「…遥輝さん、顔怖いですよ」

「なんでもない」

「そうですか…すみません、遅くなりました」

「ありがと。今日もうまそうやな〜」

「あまり変わらないですけど…」


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作者名:ゆき | 作成日時:2019年1月14日 20時

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