31-震える君 ページ12
遥輝side
どこかの部屋のドアが開いた音がした。
あぁ、Aちゃんが起きたんかな…
水飲みにいったんかな…
なんて思って、自分も水が飲みたくなり部屋をでた。
案の定、キッチンにはAちゃんがいた。
「Aちゃん…どした?」
「っ…こないでっ」
「Aちゃん?」
コップを慌ただしく机に置き、俺から逃げる。
「ちょ、俺やって…ごめん、驚かせて」
「いやっ…やだっ、来ないでっ」
「Aちゃん、落ち着いて。わかる?遥輝」
「っ…」
泣きながら、来ないでと逃げるAちゃん。
このままやと怪我をするかもしれへん…。
「ちょっと乱暴かもしれへんけど…ごめんな」
Aちゃんの手を掴み一気に抱き寄せる。
暴れるAちゃんを、強く抱きしめる。
「離してっ」
「いやや、絶対に離さへん…大丈夫やから」
「やだっ、やだっ」
「Aっ!!!お願いやから、俺の声、聴いて…」
「っ…」
「大丈夫…今は俺の声だけ聴いて…」
「は、るき…さん」
「そう、遥輝さん。ここには俺しかおらへんから…」
「あっ…」
「大丈夫…A、ゆっくり呼吸しよう…
そう、上手やね…大丈夫…大丈夫やから…」
「っつ…あっ」
「ゆっくり息すって…そう、はいて…」
「は、るきさんっ」
「ん、俺ってわかる?俺の声聞こえる?」
小さくうなずく。震えながら俺の腕をつかむ。
凄く…弱い力で。
「ご、めんなさい」
「謝らんといてー。どう、少し楽になった?」
「ん…」
「水、飲もう…そんで寝よう」
床に座り込んだままのAちゃんに水を渡す。
少し飲んで…残った水を俺が飲む。
「…立てる?…って、歩かせるのも嫌やから…首に手、回せる?」
普段なら嫌がるんやろうけど、今日は大人しく首に手をまわした。
まだ震えてる…。
「Aちゃん、軽すぎや。もっと食べなあかんて」
「遥輝さん…」
「んー、どした?」
「1人に、しないでっ」
「っ…せぇへんよ」
ゆっくりと自分のベッドに寝かせる。すぐに隣に横になる。
ずっと俺の服を掴んだまま。
「もう大丈夫やから…遥君が隣におるでー」
「…どこにも、行かないでください」
「行かない」
軽く抱き寄せたら、素直に俺の腕の中に来てくれた。
改めて抱きしめると…小さい。
こんなにほどかったっけ…なんて思いながら頭をなでる。
俺、近くに居ながらなにしてんねん…。
「A…ごめんな」
→
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作者名:ゆき | 作成日時:2019年1月14日 20時