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オートロックの扉に鍵を差し込もうとした瞬間、彼の甘い香りを背中に感じた。
鍵を掴んだ私の手の上から、彼の綺麗な手が被せられていた。
もういい加減にしてよ。
引き止めないで。
『何?まだアドバイスが足りないって?もう勘弁してよ。流星の今後の恋愛の成功に喜んで協力できるほど、私大人じゃないんだから』
「週に2回は会ってくれる?」
『は?』
「Aが週に2回、10分でも会ってくれるなら、Aを悲しませないようにしてみせる」
訳が分からない。
手を被せられているだけだからさっきほど密着度はないけれど、ドキドキは尋常じゃない。
『………無理だよ。口だけで、流星はきっと寂しくなって私だけじゃ我慢できなくなる』
「ならへん」
『なるよ。それと、なってからじゃ遅いの。信じてみて、今度裏切られたらきっと流星を殺してしまう』
「ええよ、構わない。…ちょっと俺の話聞いてくれる?」
『…………少しだけなら』
彼のあまりにも強い勢いに、押されてしまったのを感じた。
いつも緩いくせにこんな時だけずるい。
「週に2回、Aが会ってくれるなら、あとの5日。1日はAに呆れられないように掃除と洗濯を頑張る日にする」
『何言ってるの?』
「1日は大好きなクラシックを聴いて、大好きな文学小説を読んで、Aの好きだという漫画にも挑戦してみる」
『………ふふ』
馬鹿。
漫画の読み方が分からないってぶつぶつ言っていたくせに。
漫画を読んでいる私の横で、難しい外国の作者の文学小説を楽しそうに読んでいたくせに。
「1日は……………えーっと」
そこで止まってしまった彼に、くすくすと笑いを洩らす。
考え付かないなら、だめじゃん。
『思い付かないならもういいよ』
「違う、待って。大事な1日はずっと心の中にあったんやけど、かっこつけて最後に言おうとしたらあと2つが浮かばんかった」
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みのむし(プロフ) - 最高!!!でした。ありがとうございました! (2020年8月21日 4時) (レス) id: e82b36cd8a (このIDを非表示/違反報告)
☆彡 - 誤字失礼しました。 最近一気に読むよりも仕事帰りに少しずつ読むのがいまの楽しみです(*´ω`*) (2017年11月21日 19時) (レス) id: e41e162610 (このIDを非表示/違反報告)
☆彡 - こんばんは。久しぶりにコメント失礼致します。最近一気に読むより毎日仕事終わりの楽しみです(*¨*)いつ読んでも大好きな作品できゅんきゅんしています。新作も読ませていただいております!☆体調に気をつけて頑張ってください。 (2017年11月21日 19時) (レス) id: e41e162610 (このIDを非表示/違反報告)
☆彡 - 続けて失礼致します。途方もない恋はわたしにとってとても大好きで大切な話です。それと同時にこれからも陰ながらですがみやびさんを応援しております。本当にお疲れ様でした!! (2017年10月26日 19時) (レス) id: e41e162610 (このIDを非表示/違反報告)
☆彡 - こんばんは。お疲れ様でした。この作品でみやびさんを知り感情移入するほど夢中になって読ませて頂くのは初めてでした。見た目とは裏腹な流星くんの一途な想いや主人公の葛藤など魅せ方がすごく大好きな作品です。最後まで素敵なお話をありがとうございました。 (2017年10月26日 19時) (レス) id: e41e162610 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやび | 作成日時:2017年9月30日 17時