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「望月ちゃん…。もしかして、その初恋の彼…、」


『……』


「俺かもしれへん」


『は?』



あれから私たちは不幸にも桐山さんに見つかってしまう最悪のパターンを迎えてしまったので、それぞれの職場に戻ることになった。

が、桐山さんがタダで私を返してくれるわけもなく。重岡さんはそそくさと観測所へと逃げた。許せない。


そして全て吐かされ、仕事に戻りたいと言っても上司命令だとかなんとか言って離してくれなかったのである。本当、何度蹴ろうとしたことか。



『桐山さん、黙って閉館作業してください』


「えー!これからがええところやーん!あのね、望月ちゃん。今時初恋の心を抱き続けてる若者なんて、そうおらへんで?それが巡り合っちゃうなんて、なに。少女漫画?昨日読んだ少女漫画だわそれ!!」



桐山さん、少女漫画読んでるんだ。

28歳独身で少女漫画読んでキューンとかしてるんだ。



「でも、相手が覚えてないってところが漫画通りやないな。俺だったら覚えてなくても完璧に覚えてるふりできるけどね」


『いや、もう漫画から抜け出してください。あと嘘は駄目ですよ』


「分かってへんなぁ。それでも女を悲しませたくないと思う俺のハートフルな心遣いなんやで」


『あー、はいはい』


「望月ちゃん冷たい!!」



私は溜め息を吐きながら、本棚から飛び出た本などを綺麗に整頓していく。

と、後ろで同じように作業しているはずの桐山さんから手が伸びてきて、くしゃくしゃと頭を撫でられた。


私は少し顔をしかめながら、彼を見上げる。

にんまりと笑う桐山さんは何だか様になっていた。



「頑張れ、若者〜」



若者、って。自分だって23歳ってシレッと嘘吐くくせに。



「ちょっとー、桐山さんと望月さんまだここ終わってへんのー?あと全部二人に任せちゃうで?」


『あ!す、すみません!すぐにやります!』


「ごめんねー。望月ちゃんが迷惑かけて」


『早くしてください桐山さん!!』


「ふふ、相変わらず仲良しやね?」


「でっしょー。もう望月ちゃんが俺にベタ惚れで」


『さっさとしないとこの本の角で頭殴りますよ』


「ハイ」



頑張れ、なんてそんな投げやりな。

そもそも、どうしてそんなに応援されるのだろうか。それも突然。いや、嬉しいことには変わりないけれど。


頭をひねらせたところで答えが出るわけもなく、私は雑念を振り切って閉館作業に取り組んだ。



あ、今日は確か、満月だ。





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葉月(プロフ) - しげええええええ泣 (2018年1月22日 22時) (レス) id: 976831957c (このIDを非表示/違反報告)
クリームパン(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう最後の最後まで感動しました泣なんて素敵な作品なんでしょうか、こんな作品を読めてもう幸せですっ!これからも応援してます!! (2017年12月22日 17時) (レス) id: 69d39ba2c0 (このIDを非表示/違反報告)
ありさか - 藤井さんの小説からまた来ました !!! とても楽しみにしてます( ; ; ) (2017年10月24日 23時) (レス) id: f77e20ba12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやび | 作成日時:2017年10月24日 5時

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