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「俺、ほんまはどうしようかと思った。ほんまにあんたと智洋が付き合ったら、どうしようって。情けないやろ、25にもなって」


『私だって重岡さんに彼女がいるって聞いたときどうしようかと思った』


「彼女なんかいないに決まってるやろ」


『そんなの分かんないじゃん!』


「分かれや!」


『無理!』



すらすらと会話が交わされ、まるで昔に戻ったようだ。



「…桐山さんの話聞いたときも。結婚って言葉聞いただけで寒気がした。桐山さんを張り倒しそうになった」



桐山さんが哀れすぎるので、そこは何も言わないでおく。もしかすると、あの人はこうなることも予期していたのだろうか。

…なんて、あの三十路チャラ男がそんなことまで考えてるわけない、か。


彼の瞳に見つめられると、いつも動けなくなる。喉の奥が熱くなり、私はただじっとそこで立ち止まったまま。


正直、今でも信じられない気持ちの方が大きい。

本当にこれは現実なのかと、何度頬を抓ったことか。



10年間想い続けてきた彼は、同じように私のことを想ってくれていて、きっとここで出会えると信じてやって来たこの場所には、既に彼がいた。

けれど、その事実を知るのには1年かかった。それも10年に比べたら少ない方だろう。



「……望月、A」


『…何?』


「A」


『…はい』



重岡さんは、一歩前へ歩み寄る。



「俺は?」


『え?』


「俺の、名前」


『……重岡、大毅?』


「なんで疑問形やねん」



そう眉を下げて笑えば、小さなえくぼ。







「A、抱きしめてもええ?」






昔、宇宙になりたいと言った少年が居た。






『うん、思いっきり。10年分ね』


「畏まりました」









彼が愛したのは、宇宙と、本と、そしてたった一人の初恋の彼女。









END

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葉月(プロフ) - しげええええええ泣 (2018年1月22日 22時) (レス) id: 976831957c (このIDを非表示/違反報告)
クリームパン(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう最後の最後まで感動しました泣なんて素敵な作品なんでしょうか、こんな作品を読めてもう幸せですっ!これからも応援してます!! (2017年12月22日 17時) (レス) id: 69d39ba2c0 (このIDを非表示/違反報告)
ありさか - 藤井さんの小説からまた来ました !!! とても楽しみにしてます( ; ; ) (2017年10月24日 23時) (レス) id: f77e20ba12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやび | 作成日時:2017年10月24日 5時

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