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白波瀬は字が書けない。
算数も出来ず、理科や社会なんて以ての外。
簡単な単語や文章は理解出来るようなのだが、漢字は何となくで読んでいる為間違いが多い。
「文字書けんでも、AはAやしな。」
その不安を山岡へとぶつけた白波瀬だが、彼はそんな呑気な事を言ってのける。文字が書ける人間には、文字が書けない者のこの悩みは一生分からないのだろう。
「…あいうえお、なんて読めはするけれど、書き方が分からないんだ。産まれてずっと家にいたんだ、幼稚園や保育園にも行っていないから分からない。」
「……2+2は？」
文字が書けないと言っているのに、何故彼は算数の問題を出すのか。
白波瀬は両手でピースサインを作って指の本数を数えて「4。」と時間をかけながら回答した。
「あー、国語ドリルと算数ドリル買ってくるかなぁ。」
著しく学力が低い白波瀬に苦笑いを浮かべて彼は言う。
「…こくご？さんすう？」
この2つの単語すら知らないようだ。
学校生活を一切送らず日常を暮らしている人間からすると、未知の言葉なのだろう。
山岡は頭を抱えながら、2つの教科について大雑把ながら教えてみれば首を捻りながらも最後には頷いて納得してくれた。
夜、テーブルに頬を寄せながら白波瀬はじっとテレビを眺める。
足をプランプランと揺らし、時折大きな欠伸を噛み砕く。
「泰輔くん。」
携帯画面を眺めていた山岡は、突然名前を呼ばれた事に驚いたものの眉を上げて「ん？」と反応を示した。
「僕って、泰輔くんからしたらなんなの？子供？同情を向けるだけの愛玩具？」
大人びた口調で、どこで覚えたかも分からない言葉を発する。
山岡は口を閉ざし、瞳を伏せて考える。長いまつ毛を揺らしながら白波瀬は彼が話すまで待っていたが痺れを切らし、口角を上げて「いいよ。」と彼の考えを遮った。
「なんでもいいよ、僕。泰輔くんが僕をどんな風に思っていようが、どんな感情を持とうが、僕はそれを受け入れるから。」
泣き虫で小さかった白波瀬が、いつの間にやら成人済みかと錯覚してしまう程思考が大人じみている。学生という過程がごっそりと抜けているようだった。
「……Aは俺の事どう思ってるん？親？誘拐犯？」
「……言わない。」
「なんでよ、言ってもいいじゃん」
手を伸ばし、ピンク色をした頬を指の背で撫でる。
サラサラとした肌は触っているだけで気持ちよく、目を細める白波瀬を見て山岡は笑みを浮かべた。
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とら(プロフ) - 面白かったです。途中飽きてしまい読むのを放棄していたのですが最終話を読んだ瞬間なぜ読まなかったのか自分を疑いました。完結の仕方もとても奇麗に終わっていて言葉の使い方も面白かったです。言葉て表せれないくらい好きです。 (5月6日 22時) (
レス) id: 6599ce4bfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆああ(プロフ) - すごく面白かったです。最後の終わり方がすごく綺麗で読み終わった後もじーんと何か残るものがあります。すごくいい作品に出会えてよかったです。完結おめでとうございます。素敵な作品をありがとうございます。 (4月21日 22時) (レス) id: 5dd8a2525c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮
| 作成日時：2024年4月6日 1時
