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外気がどこからか流れ込み、ドーム内はポカポカと心が温まる室温となっていた。
周東から逃げ周り、山崎からりんごジュースを貰った日の事を思い返しながら、小さな口を必死に開いて欠伸をする。
ダグアウト前に腰を下ろし、頭の上に漫画でよく見る泡のようなものが飛んでいるように見えた。
背後のクッションに後頭部を乗せ、ぼうっと天井を見つめていれば
「A。」
と何度も聞いた声がした。
声のする方へと振り返ってみれば、金髪の重たい前髪を垂れさせ、じっと優しい瞳で見つめてくる山崎の姿があった。
彼を見るだけで嫌悪が湧いたが、普段と様子が違う事に気が付いて逃げる事はしなかった。
「眠いやろ。」
そうやってはにかむ彼は、骨張った指の背を春兎の前にやり、何とか慣れてもらおうと試行錯誤する。
突然変わった彼に眉をひそめるが、彼の匂いを嗅いでほんの少し安心したようだ。目に掛かる程ある春兎の前髪をかきあげてやろうと毛先へと指を伸ばすが、それはまだ許していないらしく数歩後退って距離を取る。
「仲良くしよ。追い回したのはほんまに悪いって思ってるから。」
「意地悪するじゃないですか。」
「あっ、こないだのりんごジュースのやつ？まだ根に持ってた？」
「意地悪嫌いですもん。」
ちらりと彼を上目で見ると、すぐに視線を逸らして目の前に広がる空席の外野スタンドを端から端まで瞳を動かす。
今日もこの席が埋まるんだと思うと、人の感覚と実際のサイズというものはこんなにも認識の差があるのかと驚いてしまう。
「俺、ほんまにAと仲良くなりたかっただけで。嫌がる事も宮城とかからも聞いたから、…ほんまに、仲良くしたい。」
隣で春兎を見つめる彼が縋るような声色で話し掛けてくるものだから、ちょっとした情が湧いた。
「…僕もこの性格、頑張って治すので…面倒かとは思うけど、仲良くしましょ。」
「まじ？！」
なんて言いながら、彼は胸に飛び込んでこいと言わんばかりに腕を広げるが、春兎はそれを
「まだちょっと早い。」
と横に首を振って拒絶した。
仲良くしたいとは言ったが、急な距離の詰め方は抵抗があるようだ。
「じゃあ撫でさせてよ。」
「撫でても何も楽しくないですよ。」
「俺だけ許されてへんの有り得んて。」
子供のように頬を膨らませる彼を見て、" ふっ " と口角を上げて笑う。漸く自らに向けてくれた笑顔を目に出来た事に山崎の表情は晴れ、「もっと笑顔見して。」と春兎の手を流れるように取った。
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作者名：宮
| 作成日時：2024年3月24日 13時
