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周東は山崎と同様心に壁が出来てしまったようだ。
落ち着いた春兎は正木から離れ、まだ目の前にいる周東を真ん丸な瞳でじっと見つめて会釈した。

「次会う時は扱い方修得しとく。」

と笑ってくれただけ、まだ周東の方が親しみやすいかもしれない。「ありがとうございます…。」と礼を述べた春兎は、正木に「またね。」と声を掛けて逃げるようにダグアウトへと走っていった。

自球団の選手が集まる選手サロンまで逃げて来た春兎は、壁際の席に腰を下ろして頭を抱えた。
張り詰めた空気が漸く解けて、今になって心臓が煩く音を立てる。

「大絶叫やんお前。」

突如わ隣に腰を下ろした山崎に体が固まってしまう。
怖がっているのがハッキリと分かる姿に山崎はまた不服そうに口をへの字にさせた。

「いる?りんごジュース。ほら、新品やから。」

そう言いながら、彼は紙パックのりんごジュースにストローを刺してやり、春兎の方へと向けてみた。
ちらりと視線をやった春兎は、手を伸ばして取ろうとしたが山崎が「飲ませてやるから。」と目尻にシワを寄せる。

「いや…さすがに。」

「ほら、飲まんの?」

ん、と差し出す彼を怪しく思いながらも小さな口を開けてストローを追い掛けた。
飲もうと咥えようとしたところで、山崎はストロー口を離して意地悪をする。

「おもろ。」

と意地悪に笑いながらもう一度ストローをもう一度春兎へと向けた。

「そんな意地悪するから嫌われるんやでそーいち。」

背後から声がしたかと思えば、頭を軽く叩かれ山崎は振り返る。
山岡は少年のように笑いながら

「なー。腹立つよなーそんな意地悪されてなぁ。」

なんて彼は寄り添ってくれる。
賑やかな選手サロンで3人に注目している人物はいない。咎められた山崎はりんごジュースを春兎の前に渡して「すませーん。」と山岡に謝罪をした。
駄々を捏ねた後の子供のような納得していない謝罪に、山岡は呆れながらも一緒に春兎へ謝罪した。

「そーいちは兎の性格をちゃんと理解しよ。」

「性格は兎って言っても、大元は人っすよ。」

「もー。遼人にちゃんとレクチャーしてもらってな。」

山岡は山崎の肩を叩いてその場を去って行く。
その間何も話さなかった春兎は、山崎からもらったりんごジュースを飲みながら怯えた瞳で見つめていた。

「……嫌いな奴からもらったジュースは飲むんや。」

「ジュースはなんも悪くないので…。ジュースありがとうございます。」

礼は忘れない春兎に余計興味が惹かれる。

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作者名: | 作成日時:2024年3月24日 13時

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