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「えぇっ！A抹消すか？！」
翌日、ドームに姿を現さなかった春兎に首を傾げていた山崎は報告された内容に驚きを隠せていないようだった。
「長期休養だって。こう言ったらあかんと思うけどさ、」
選手サロンで携帯を眺めていた山岡は、目の前に腰をかける山崎を見上げてすぐに視線を外す。
頬杖をつきながら、右手で何やら打ち込んでいるようだ。
「殆どそーいちのせいやと思うねん。」
可愛い通知音が鳴り、山岡はまた打ち込んでいく。
携帯画面に映し出されるチャット画面は、相手からのメッセージは淡々としているが既読はすぐにつく。返事が来るだけでも山岡は嬉しいようだ。
「なんでっすか、俺なんかしたっけ。」
「仲良くやってると思ったら、なんか髪とか引っ張り出すし。最近それが酷かったよ。Aも最初より完全に怯えてたしさ。」
「…えー。」
同じく頬杖をついた山崎は彼の手元を見つめる。
忙しなく動く指に疑問を抱きながら、思ったまま「何してんすか？」と問い掛けた。
チラリと一瞥する山岡は「んー。」と呟いたまま、話すのが億劫と言わんばかりに口を開く。
「Aとやり取りしてる。」
「なんて連絡来るんすか？」
「……教えなーい。」
はにかみ笑顔で携帯画面を胸元で隠しながら意地悪を言う。
目の前の山崎はほんの少しムッと口を尖らせたが、先輩でもある為何も反論は出来ずにいた。
" 存在意義って、見つけるの難しいですね。"
最後に送られてきた文章に目を通し、山岡はどう返事をしようかと頭を悩ませた。
「……。」
陽射しが射し込むリビングで、横になったまま携帯片手に目を瞑る。
睡眠障害を引き起こし、処方してもらった睡眠薬を服用した。
陽だまりの中で横になるのは心地好く、呼吸をする度眠くなる。
寮を出て、一人暮らしを始めたばかりの築年数そこそこのマンションの一室。目の前に広がる大空を切り取るように茶色のガムテープで縁取られた大きな窓。
あちこちの扉が開き、煙が立ち込める。
行われる野球中継、山崎の名が球場に響き渡った。
重たい瞼を必死に開き、テレビ画面を見てみれば投球練習をする普段通りの彼がいた。
金髪をかき上げ、捕手のサインに頷く彼をジィっと見つめた後、目を瞑る。
最期に目に焼き付けたのは、大嫌いな彼の、大好きな投げる姿だった。
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作者名：宮
| 作成日時：2024年3月24日 13時
