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翌日、春兎はベッドの中で蹲っていた。
昨夜大量失点した事と、山崎を拒絶し皆の前で大泣きしてしまった事が春兎の体を押さえ付けていた。

「…動けない…。」

起き上がるのも苦痛で、誰の顔も見たくないと思ってしまうほどだった。

「はる。」

扉が開けられ、監督の声がする。
廊下の声が鮮明になり、遠くから聞こえる福田の笑い声がズキンと鼓膜に刺さる。

「しんどいか。しんどそうやな。」

なんて監督は言うが、心配しているのかなんかのか、顔を見れない春兎には感情が汲み取れない。

「昨日ちょっと無理させすぎたな。」

「……起きられないです、体が重い。」

「…本っ当にしんどそうやな。今日は休んで、また後日調整しようか。」

監督の言葉にこくんと頷くと寝癖がついた髪がふわりと揺れる。
パタンと閉じられた扉に廊下の灯りが遮断され、また部屋の中は薄暗くなってしまった。
不甲斐ない自分に自然と涙が出てきてしまい、うつ伏せのまま枕に顔を埋める。

「……颯一郎さんに謝らないと。」

蚊の鳴くような声は誰にも聞こえず、うっすらと朝日が差し込むカーテンが返事をするかのように揺れた。


ホテルの部屋から全く動けず、食事もまともに摂らなかった春兎は壁に向かってベッドに横になっていた。
明るかった外もいつの間にか真っ暗で、車の走行音だけが部屋に響く。

静かすぎる部屋では耳鳴りがして、枕に顔を埋めてまたも蹲る。
そんな時、コンコンと2度高い音が鳴った。「……はい。」覇気の無い声で返事をしてみれば、試合が終わって帰ってきた山崎が顔を覗かせる。
春兎は相変わらず布団に潜ったままだった。

「颯一郎がきーたーよ。」

何度も聞いて頭にこびり付いている彼の声を耳にし、掛け布団の中からチラリと顔を出してみる。
見下ろす彼には重たい前髪が掛かり、その奥から優しく笑う瞳が春兎を見ていた。

「大丈夫?」

「……あの、あの。」

昨晩拒絶したからか、山崎は手を伸ばそうとしない。
そんな彼にほんの少し寂しさを覚えながら、布団の中から手を伸ばして彼のシャツを握る。
のそのそと上半身を起こした春兎はベッドに座った。

「す、す、すみ、ま、せん…でした。」

何度か吃りながらもペコンと頭を下げて謝罪した春兎に山崎は眉を上げて驚きながらも

「俺は気にしてへんし。でも、何があったんかは俺もやけど皆気になってんで。」

と彼は優しく声をかける。ベッドに山崎が腰をかけると、ギッと木枠が軋んでマットレスが沈み込む。

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作者名: | 作成日時:2024年3月24日 13時

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