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最終回で1点差まで追い付いたが、最後の最後で得点に繋がらず春兎の大炎上で試合は終了。ダグアウトへと戻って来た春兎に涙は見られなかったが、どこか茫然としており周囲も上手く声が掛けられずにいた。

ロッカールームへと戻って来た選手らは、壁際のロッカーを使う春兎を気にするようにチラチラと視線をやり、サロンへと向かっていく。数人が残ったロッカールームに汗を拭いながら入室した山崎は、

「Aーちゃん。」

なんて陽気に名前を呼んだ。
それでも反応を示さずにぼうっとしたまま手元を見つめる春兎の顔を少しだけ覗き込み、大きな手で前髪から頭頂部にかけてを手ぐしで撫でてやった。

その瞬間、びっくりして肩を跳ねさせながらガタガタッと物を床へと落としながら壁に背中を預け、両手で頭を隠す。
怯えきった瞳は水面のように波打って山崎を見上げていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい引っ張らないで、髪、引っ張るのやめて…ごめんなさい、ごめんなさい、」

ブルブルと体を震わせ、そこそこに大きな声で謝罪を始める春兎に山崎は狼狽えた。
明らかにおかしい春兎に宗や渡部が寄っていき、落ち着かせようと腕をさすってみるが「ごめんなさい、許してください、」と涙声になり、ズルズルとしゃがみ込んだかと思えばロッカーの方を向いて背中を丸めた。

3人顔を見合せ、宗は山崎に

「髪引っ張った?」

なんて聞く。

「こう、こうやって撫でただけ…皆してるやつっすよ、」

と焦りきった声色で話しながら、渡部の髪の毛で実践する。
前髪から手ぐしでかきあげるように撫でる仕草を見て宗も納得したのか頷いて春兎へ視線を戻す。

「皆怒ってないよA、亮さん呼んでこようか?なんか笑って話してたじゃん、呼ぼうかあの人。」

宗の言葉にうんともすんとも言わない春兎に3人は頭を悩ませ唸りながら考えた。

「呼んできますね、多分俺らは離れてた方が落ち着くと思います。」

機転の利く渡部の言葉に頷いた2人は、もう一度声をかけ、そそくさと着替えた後にロッカールームを後にした。

「亮さん、ちょっといいですか。」

サロンで賑やかに軽食を摂ったり会話をしていた皆の注目が渡部に向く。

「なにー?」

「Aがちょっと。」

「俺も行っていい?」

石川の隣にいた山岡が自らを指差して問い掛けるが、「あかん。」と杉本に拒否され「ええー!」と残念そうに声を上げた。
席を立った石川は渡部に状況説明をされながら、ロッカールームへ向かった。

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作者名: | 作成日時:2024年3月24日 13時

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