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1人で韓国入りした山本だが、まだ熱愛報道の熱は冷めやらぬ状況だった。

「 " 熱愛相手は今回連れてきているのですか? " 」

カメラの前の会見で、記者が山本へと問うた。
通訳を経て内容を理解した山本は、少し照れ臭そうにはにかみ、頬を人差し指で掻いてみせる。
相変わらず心を和らげてくれる山本の笑みは、ヒリつくであろう会場をも優しくさせた。

「連れて来てないですよ。」

その言葉もまた通訳を経て全体へと伝えられる。

「 " 恋人がいる事は認めるのでしょうか? " 」

ふんふん、と通訳から聞いては1人で口を大きく開けて笑ってしまう。恋人になれればどれほど良かっただろう。山本は首を横に振りながら

「熱愛相手も仲良い男友達です。恋人だなんて、そんな。」

そうやって否定はするが、目の前の彼らは何も信じていないようだった。それどころか、" 同性の恋人 " と勝手に切り取って報道する始末だ。

暑くも寒くもない会場で、山本は他の記者の質問にも紳士に答え、時間となりそのまま壇上から降りた。

本当に、恋人になれたらどれほど幸せなのだろうか。
殆ど叶うことの無い想いを抱えながら、誤解が解けていない事の悩みを心に引っ掛ける。

広く長く綺麗な廊下を歩き、ロッカールームの扉を押した。
京セラドームよりも当たり前のように広いその場所で、大谷の隣の自身のロッカーへキャップを置く。

「好きでしょ、Aくんの事。」

隣で携帯を眺めていた大谷だが、山本が来た事によってカバンへと携帯をしまって質問を投げ掛けた。

「めっちゃ好き。あいつの為に生きてるところあるっすもん。」

「由伸重いわ。」

「でもほんまに、あいつは振り向いてくれへんから…余計燃えるというか。」

ユニフォームに着替えながら、整頓出来ないロッカーを前に返事をする。恋に悩む後輩を見つめて大谷は小さく笑う。青春を見ているかのようで楽しいのだ。

「どうする?Aくんに彼女出来たら。」

その一言で山本の着替えの手が止まったかと思えば、光の無い瞳が大谷へと向けられた。

「許さないっすね。」

先程とは違い冷淡に言葉が返され、暖房機器から流れるのは体が温まる風のはずなのに、2人の間の空気は冷え固まった。
少しして、山本は彼の言葉に「嘘っすよ。」とはにかんで思ってもない返事をした。

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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