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翌日には2人の夜道での写真が週刊誌やネット記事に大きく載る事となった。

" ドジャース 山本由伸 "

" 夜の街で彼女と親密デート?! "

と、大きな見出しが表記されている。
山本の目を瞑って頬を寄せる写真と、薄ら瞳を開いてカメラレンズをしっかり見ている写真の2枚が載せられていたのだが、そのどちらも伊近は男か女かも分からないシルエットとなっていた。

黒髪を靡かせる伊近は、シッター先から頼まれた買い物の途中で大型ビジョンに映し出される山本の熱愛報道を目にしていた。

「 " …ねつあい。" 」

大きな文字をぽつりと呟く。
写真は見る人が見ればシルエットでも男と分かるだろうが、他人からは全く分からないのだろう。
オープン戦前になんて写真を取られてしまったのだろうか、と心臓が凍り付いた。

「 " ねつあいって? " 」

腕に抱いた女児が伊近の肩を強く叩いて問い掛ける。

「 " あー。愛し合ってるって事…かな…? " 」

「 " ヨシノブ、彼女がいるの? " 」

「 " どうだろう。俺には分かんないや。" 」

明らかに表情が曇った彼女は、きっと山本にお熱だったのだろう。
青信号を渡りながら、彼女の背中を一定の感覚で優しく叩いてやりながら「 " 大丈夫、大丈夫。" 」と落ち着かせようと必死になった。

耳元で「 " 私のヨシノブー!! " 」なんて叫ぶ女児に驚きながら、体の芯から暖まる陽向で彼女をあやす。

「 " 大丈夫だよ、ヨシノブは彼女なんか居ないよ。" 」

「 " …本当? "」

「 " 本当だよ。あの画面に映るのはただの友達だよ。" 」

彼女がいないかは分からないが、画面に映るのは明らかに昨夜の自身だった。
彼女も落ち着きを取り戻し、潤んだ青い瞳で伊近を見つめて納得したように頷くと腕の中から降り、手を繋いでスーパーまでの道のりを歌いながら歩んだ。


「ちょっとあれはヤバいんちゃう。」

夜、外出から戻って来た山本に伊近は言った。
シッター先の女児すらも取り乱していた事を伝えてみれば、山本は「まじか!」と楽しげに笑う。

「あんま気にせんとって。監督にもあれはお前って事伝えたし、世間は大谷さんの結婚で俺の事なんか忘れるって。」

「あんな大々的に報道されててよく言うよ。」

文句を言いながらも、山本に夕食を提供するのは情なのか、義務なのか。
ため息を吐くその薄い口も愛おしい、と口角を上げて「んふふ。」と小さい笑みを零した。

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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