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テレビを付けるとどの報道番組でも大谷選手が、山本投手が、と2人の名前を口にする。
またやってるよと何度心の中で呟いただろうか。

「由伸さん、あのお弁当自作なんですかねー。」

宮崎の春季キャンプ、地獄のシャトルラン前に宮城は太陽の陽射しに目を細めながら無意識に口にした。
隣で聞いていた山崎は、強風に煽られる自身の金髪を手ぐしでかき上げながら考えるように首を捻る。

「あれちゃう?そういう専門の雇ってるとか。」

「あー、ありそう。そういうのには出し惜しみしなさそう。」

身長差のある宮城の肩に肘を置いていた山崎だが、順番が来てしまい列の先頭に立つ。
合図と共に5、6人と駆け出したが疲れのせいか走る度脱力してしまう。そんな山崎の姿を見てカラカラと山岡は笑っていた。


「 " そうそう!やるやん! " 」

とある大きな一軒家。
片手に活発な赤子を抱きながら、小学校低学年の男児の宿題を見てやっていた。
時折赤子の小さな手でバチン!と目元や頬を叩かれたり、鼻を容赦無く掴まれたりするが、怯むこと無く構っている。

「 " イチカ、教えて。 " 」

「 " え、出来てたじゃんさっき。これをここに持ってきたら解けるんじゃないかな? " 」

骨張った長い指をプリントに置き、問題文を指差しながら教えてやれば彼はまたスラスラと問題を解いていく。
全て解き終われば、" どうだ " と言わんばかりの自信に満ちた表情を浮かべ、親指を立てる。

「 " イチカは仕事しないの? " 」

「 " 君達のお世話が仕事なんだよ。" 」

どうやら無職だと思われていたようだ。両親がいない時間帯に勝手に来てお世話をする変な男だと思われていたのだろうか。
男児の小さな頭を撫でてやり、片腕に抱いた赤子を寝かせようかと顔を向けた瞬間、伊近の黒髪を束で掴み、赤子とは思えない力で強く引っ張られた。

「痛いッ、あ、痛い痛い!」

目を強く瞑り、痛がる素振りを見せる伊近を見て赤子も男児も声を上げて笑っている。
何をやっても離してくれない小さな手に絶望しながら、飽きてくれるのを必死に待つだけとなってしまった。

「 " イチカ、ハゲるかもね。" 」

「 " それだけは避けたいところ…。" 」

なんて呟くが、言葉の分からない赤子は更に両手で髪を掴み、縦横無尽に引っ張り回し始めた。

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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