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時々伊近の元に戻って来る山本は、その度に水入らずの時間を楽しんでいた。
この日も、薄く紫がかる空の下でレストランに背を向ける。まだ周囲が確認出来る程度の明るさなのだが、人通りは少なかった。

「撮られたね〜ここで。」

山本が伊近の腰を抱いて懐かしむ。
いつだっただろうか、2人でくっ付いて歩く姿を見事なまでに撮られ、大々的に報道される事となったあの騒がしい日々が想い出になりつつある。

「最近やっと落ち着いてきたよね。」

山本の肩に腕を置き、彼の隣を歩く。
そんな時、何かが落ちかけの夕日に反射して光ったように見えた。
2人して光の先を見てみれば、大きなカメラレンズが向けられており、お互い思わず顔を見合わせる。

まさか同じ場所でまたカメラと遭遇するとは。
そう思うと面白くて仕方が無くて、吹き出すように笑った。

余計に伊近の腰を引き寄せたかと思えばカメラに向かってピースサインを作って見せた。それを見た伊近は同様にピースサインを作り、彼の頬に自身の頬を寄せた。

完全にカメラもバレた事を認識したのだろう。
お構い無しと言ったように2人の姿を写真に撮り続けた。


" 山本由伸 "

" またも熱愛か…?! "

2度目の報道に皆の興味も余計惹かれた。
匿名掲示板やSNS、週刊誌等でまたも大々的に話題にされてしまう。

短期間に2度も撮られた事に騒ぐ人もいれば、今回の相手はただの友人のような姿の2人だし、と気にもしていない人もいる。

靡くレースカーテンを留めながら大きなテレビ画面へと視線を向ける。試合終了後のインタビューで詰め寄られている山本を見ながら、呆れたように息を吐いて笑う。

「 " 以前言っていた同性の恋人が今回の方なのでしょうか? " 」

との言葉を通訳を通して聞けば、その話かぁと言わんばかりに眉を下げてはにかむ。

「一言もそんな事言ってないんですけどね。」

「 " その時の方と今回の方はまた違う人物なのでしょうか? " 」

「同じ人です。真剣交際です、誰がなんと言おうと。」

その言葉でカメラのシャッターを切る音が増えた。
テレビの前の伊近も1人で顔を茹でダコのように真っ赤にさせながらリモコンを手にテレビ画面を消す。

「…ほんまに、あいつ。」

と呟いて彼に呆れるが、真剣交際なんて聞いてしまえば口角が嫌でも上がってしまう。
今度帰ってきたら好物を並べてやろうなんて考えながら、シッターの仕事へと出掛けて行った。


───
END

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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