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「なにそれ、手作り?」

キャンプ初日の昼の事。
練習日和と言わんばかりに暖かく晴れた空が窓から覗く食堂で、大谷は正面に座る山本の手元を見る。
長方形のふたつの弁当箱には彩りと栄養が考えられたおかずとおにぎりが詰められており、目を惹いた。

「今日だけっすけどね。」

「自分で作ったの?」

「いや、同居人が。」

大谷に問われ、山本はまるで自慢するかのように笑って話す。食べてしまえば無くなる弁当だが、自身の為に作ってくれた事が何よりも嬉しいのか陽だまりのような笑みを浮かべて口に運ぶ。

「由伸も彼女かぁ。」

「違うって。まじで同居人!」

目の前の大谷は、思春期の学生を茶化すような意地悪な笑みを浮かべており、それに対して必死に言い訳をする。

「どんな人?」

「高校時代の友達っすよ、同い歳の。」

「引っ張って連れて来たんだ?」

「元々こっちで仕事してたんですって。」

山本から聞き出した情報に「へぇ。」と頷きながら、どこか楽しそうにしている。
どんな子なのだろう、と想像しながら食事を進める。

選手らの集まる食堂へ、大きなテレビカメラが向けられた。
地元のテレビ局のようで、許可を得て選手の行動を追っている。広い食堂全体を映した後、大谷の大きな背中へとカメラを向けた。
リポーターが何やら話しているが、ネイティブ過ぎていまいちリスニングが上手くいかず右から左へと抜けていく。

「いい人掴まえたね。」

「だから違うって!!」

山本の反応が面白く、必死に否定する彼を見てケタケタと声を上げて笑う。
ヤンチャな小学生のような茶々の入れ方で、歳下の山本は疲れきったため息を吐く。食事を終えた大谷は席を立ち、食器を返却しに向かう。
一方の山本は、彼が居ないうちにと弁当を食べ進めていった。


「大谷翔平選手の昼食は食堂のものですが、」

日本の報道番組でまたも枠を取ってドジャース情報が流される。今回は昼食の様子から始まっている。リビングでぼうっと眺めていた山崎は " またやってるよ " と少しばかり呆れ気味だった。

「山本由伸投手の昼食は、手作りのお弁当のようです。」

女性アナウンサーが抑揚を付けて話す。
席を立った大谷の向こうに映る山本の手元にはふたつの弁当箱。前々からそんな食事ではあったが、海を渡ってからも徹底しているのかと眉をあげる。

「自作なのか、お相手がいるのか気になるところですね。」

アナウンサーの声に「うるせぇ。」と呟き、リモコンで電源を落とした。

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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