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スタジアムのモニターに映る伊近は余りにも可愛かった。
映る度親指を立てて笑う彼は、この時ばかりはただの観客として過ごしている。ダグアウトからモニターを見つめる山本の表情は穏やかで、幸せに溢れていた。

「うあー、可愛い。」

リアクションのレパートリーが少ない彼の姿に、山本はベンチの背もたれに手を置いて身を捩って言う。
伝わらない愛を呟く彼を見て、大谷は「告白したら?」と問い掛けた。

「今の関係が壊れてもいいんすか?!」

「そんな大きな声出さなくても。」

「築き上げた友情があって、告白したらそれが全部崩壊するんすよ。それなら友情のままで一緒に住んでたい。」

「分かるけどさぁ。」

水分補給をしながら彼の必死な訴えを聞くが、大谷は呆れているようだ。
行動しないと今の関係から何も変わらないというのに、そう言いたいのだろう。

「なんで空港からずっとAくんとは別行動だったの?」

「好きな相手をテレビに出したくないっすもん。」

「独占欲強めなんだね。」

と大谷は笑うと、彼の背中にある18の文字を叩いてその場を離れて行く。


あっという間に試合は流れ、いつの間にか終わっていた。
楽しいと時の流れは早くなると言うが、本当のようだ。
格好良い所を少しでも見せられたかと不安は募るが、ロッカールームで着替え、宿舎へのバスが発車する時間まで伊近と過ごした。

緊張からか、試合の善し悪しを彼に問えず沈黙が流れる。
廊下のベンチに腰掛けていた2人のうち、最初に口を開いたのは伊近だった。

「やっぱお前すごいよ。格好良かった。」

静かな空間で突然褒められ、顔に熱が集中するのが分かる。

「こう言ったらお前の肩書きに肖ろうとしてるみたいだけど、お前と友達で良かった。」

「……。」

「高校の頃、話しかけてくれたのお前だけだもん。嬉しかった。」

モニターに映った時と同様、照れたように笑う伊近は山本が好きな彼そのもので、人の目がある中で強く抱き締めそうになった。
必死に自身の欲を抑え、山本も「ほんま?」とはにかみ笑顔で問い掛ける。

「ほんまに。こう見えて俺、結構由伸の事好きやで。」

眩い伊近の笑顔に更に心を掴まれる。
胸に手を当て浸っていれば「時間らしいで。」と伊近は立ち上がって山本の肩を叩いた。

「A。」

「んー?」

帰ろうと山本に背を向けていた伊近は首を傾げて振り返る。

「俺も好きやで。」

そんな告白に、いつもの笑顔を返すだけだった。

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作者名: | 作成日時:2024年3月19日 21時

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