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寒気が襲い、急激に冷え込み始めるアメリカで報道番組が始まった。
聞き慣れたオープニング曲が流れ、「" 速報です。"」と暖房で和らぐリビングに女性アナウンサーの声が響く。
スリッパがフローリングに擦れる音が報道内容を邪魔する中、
「" 山本由伸投手の移籍先が＿。"」
との言葉が耳に入り、小さなスプーンでココアを混ぜながらテレビへと視線を向けた。
山本が移籍先をドジャースへと決めたとの報道だった。大谷からも誘われただとか話し合いを重ねた結果だとか話が進んでいくテレビ画面を見つめながら、マグカップに入ったココアを啜る。
思ったよりも熱く、肩を跳ねさせマグカップから口を離し、火傷した舌先を庇った。
広くも狭くもない平々凡々な部屋で1人悶えていれば、携帯の可愛らしい着信音が突然鳴り響く。「うおっ。」と音に驚きながら、ソファの前のローテーブルまで歩み、携帯を手にした。
「なによ。」
表示される名前を見て、電話を取る。
耳に当てて開口一番要件を問うた。
「Aって今仕事何してるっけ？」
「ベビーシッター。」
「今月中に家引き払える？」
「え？」
彼の唐突な問い掛けに疑問符を浮かべる。
何をもってそれを問うているのか不思議で堪らなかったが、言葉を続けた。
「丁度更新時期ではあったけど。」
「あ、ほんま？！次の家決めてへんよな？」
「決めてへんけど、なんやねん。はよ要件言ってや。」
「いや、俺日本離れるやん。Aと住みたいなって思ってさー。」
電話の向こうで彼はヘラヘラと笑う。
目の前のテレビでは相変わらず山本の移籍報道がされており、嘘をついている気配は一切感じられなかった。
「俺何したらいいの、お前ん家で。」
「俺の弁当作って。家事もやってほしい。」
「バイトって事？」
「んーん、俺がお前を養うって事。」
その彼の言葉にすぐ了承し、そのまま「諸々の準備やっててな！」と電話が切れてしまった。
耳元で鳴る無気質な音。" 山本由伸 " と表示された画面には通話終了の文字が記載され、そのまま電話の画面を暗転させる。
高校の頃の同級生で親友。1年に1度会うか会わないか程度の関係に落ちていたのに、何故。と首を捻る。
それでも、丁度家無しになる為好都合で、首を縦に振る以外の答えは無かった。
スリッパの音を鳴らし、キッチンに置いているマグカップを手にして温くなったココアをひと口啜った。
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作者名：宮
| 作成日時：2024年3月19日 21時
