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「水樹、ちょっと。」
席につき、3人でいつ水樹の家に行こうか、2人の家はどんな家なのか、という話題で盛り上がっていると教室の入口から名前を呼ばれた水樹
顔を上げると来い、と言うように手のひらを上にして4本の指をクイクイと曲げ呼んでいる。
「呼ばれたわ、ちょっと行ってくる」
「はよ戻ってきてなぁ」
「行ってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振る2人。そんな2人に笑みを浮かべ、水樹は呼ばれた方へと向かった。
「ちょっと」とそこで用件は何も言わずついて来いと先頭を歩く。同じクラスの人間なのだろうが、生憎水樹は昨日から2人の顔しか殆ど覚えていない。
名前も分からない為頭にハテナを浮かべながら黙ってついてきていた。
「堂本さんに近付くなって言ったよな」
人気が無く、薄暗く埃っぽい場所で壁に追い詰められた水樹。
その言葉でハッと昨日の嫌な奴だと思い出した。
「嫌や」
「…は?」
「昨日も思たんやけど、俺が何でそんな事言われなあかんの。暗黙の了解とか知らんねんけど」
「ッ、転校生の癖に調子に乗んなよ!!」
長く広い廊下に、そんな怒鳴り声が反響する。キーン…と耳鳴りがし、眉を顰めると何が気に食わなかったのか男子生徒は水樹の胸ぐらを掴んだ。
自身よりも背の高い男子生徒、拳だったのが膝に変わり昨日と同じ箇所へと膝蹴りが入る。
苦しそうな、呻くような声を上げゲホッと咳き込んだ。そんな事などお構い無しに蹲りそうになる水樹を無理やり立ち上がらせ、脇腹やみぞおち等に集中的に暴力を加える。
「ッは、ぅ"え…」
「昨日は転校初日だったから大目に見たけどよぉ!!今日からは容赦しねぇからな!覚えとけよお前!」
体感的に10分は超えてると感じていたが、実際の時間はその半分でたったの5分。ずり落ちるように座り込み、ゲホゲホッと大きく咳き込んで腹を押え蹲る。
激痛と気持ち悪さとでそこから数分動く事が出来ず、人気も無いため誰も通りかからない。
立ち上がる事が出来たのはそれから5分後の事。
壁に手を付き、足元はふらつきながら漸く立ち上がれたのだが息は上がっており、髪は乱れてしまっている。
折角セットした綺麗でキメ細やかな髪の毛も、寝癖のように変に跳ねて前髪も降りきってしまっている。
「…」
何とか教室に着くまでに息を整え、静かに扉を開けると周りからは登校した時よりも更に冷たく鋭い視線が向けられた。
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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時