#8. ページ8
昼休みはあんな事を言われたが、教室に戻ると2人がすぐに手招きをしてくる為断るに断れない
ああ言われたばかり、周りの視線が余計痛く感じていたが2人はそれに気付いていないのか去年の話等を次々に口にする。
水樹は目を細め、薄く口角を上げながら相槌を打ち楽しそうな表情の2人の話を静かに聞いていた。
5、6時間目と何事も無く授業が終わりホームルーム。
担任が教壇に立ったが、特に連絡事項も無くそのまま挨拶をして解散となった。
部活に行く者、図書室に勉強をしに行く者と放課後は自由気まま。3人は鞄を持ち、下駄箱へ一直線に歩いて行く。
「Aくんの家近いん?」
「そこそこ近いんちゃうかなぁ、歩いて来れる距離やから…」
「じゃあいつか遊びに行きたいわ」
「ぼくも行きたいわ、Aくんが暇な時にでも」
靴に履き替え、トントンとつま先を地面で叩き校門に向かって歩みを進める。
安定の水樹を真ん中に、左に光一右に剛。2人とも覗き込み、水樹の顔を見ては許可を貰おうと少し必死になっているようにも見える。
長いまつ毛に通った鼻筋、綺麗な瞳整った顔立ちが2つも水樹をじっと見る。
「…2人の時間があえば全然来てええよ」
「まじで…?!よっしゃ、めっちゃ嬉しい」
「Aくんの家楽しみやわ、今度行ってもええ?」
ニコニコと目尻に皺をいくつも寄せ、自然に満面の笑みを浮かべ喜ぶ光一と、内心凄く舞い上がって約束を取り付けようとしている剛。
そんな2人にうんうんと頷き、「来たい時行ってな」と苦笑いを浮かべる水樹。
2人とは校門近くの信号で別れ、横断歩道を渡り真っ直ぐ歩く。
学校から20分程度で一軒家へ到着。有名私立校へ通っているからと言って大豪邸や高層ビルに住んでいるわけでは無い。
一般的な大きさの、普通の家庭。
「ただいまぁ」
と掛かっていた鍵を解錠し玄関の扉を開け、靴を脱ぎリビングを覗く。
案の定母親も父親も帰ってきておらず、家の中は真っ暗だ。
そのまま2階の自室へ向かい、鞄を机に置いて制服を脱ぎ部屋着へと着替える。
制服は上も下もハンガーにかけ、寝床の頭上の壁へ引っ掛ける。
リビングに降り、手を洗うと冷蔵庫の中を覗き込みおやつとして置かれていた1つのプリンを手に取り、スプーン片手に椅子に座りソファに腰を下ろす。グッと沈み込むソファの背もたれに体を預け、甘いプリンをひと口、またひと口と食べ進めていく。
「…暇やなぁ…」
13人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時