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剛の敵など増えず、ただただ水樹の敵が増えていくばかり
そんな水樹だが、少しずつ慣れてスルースキルを身につけていた。
通り過ぎる際、蹴られたり拳を振り上げられたりはするがそんな事では動じなくなっていた。
ただ、弁当が捨てられたり机に落書きされたり、教師からの体罰等の出来事は精神的に来るものがある。
「水樹、お前大変だったなぁ…」
2、3時間目の間の休み時間。廊下を歩いていると不意に背後から話しかけられた。
振り返ると副担任が立っており、水樹は1歩後ずさる。
「ちょっとおいで」
そういうと、水樹の両肩に手を置いて薄暗く使われていない空き教室へと連れていく。
「嫌や」と首を振りながらも力に負け、教室の中へと連れ込まれた。
ガチャン、と内から掛かる鍵。水樹は扉とは反対の窓際へと立ったまま動かない。
「…水樹、堂本とどこまで?」
1歩、また1歩と近付く灰原。背後は壁、後ずさることが出来ずただただ近付いてくる副担任を睨んでいた。
無抵抗の水樹の柔らかな頬を撫で、体をグッと近付け問いかける灰原。片手から両手に、両頬に掌で覆うように触れると顔を自身の方へと向かせ目を合わせる。
「してへん」
「掲示板に貼られていた写真…完全にそうだよね。誘ってたんでしょ?」
「そんな関係じゃない」
「水樹はどっち側?」
「…」
否定するが何も話を聞いていない灰原。そんな彼に嫌悪感を覚え、眉をひそめると手を振り払い目を逸らす。
口を閉じ、もう何も喋らないと決め込んだ水樹は腕を組み自分を自衛する。
そんな水樹を見た灰原、水樹の小麦色の腕を撫でシャツの袖の中に手を入れると指を這わせる。
「堂本とするなら、俺ともしてくれる?」
そんな事を耳打ちされ、ハッと灰原の方に目を向ける。
再度腕を触る手を振り払い肩を力強く押すと壁際から離れ、机の置いてある方へと向かう。障害物で近付かせないようにしようとしたのだろう
「俺は剛と光一が好きやねん。恋愛じゃない、友人として親友として」
「…俺は周りの教師とは違う、水樹が好きで優しくしている。大好きなんだ、こんな教師滅多に居ないだろう?」
「お前からしたら堂本は邪魔なんか」
「ああ、邪魔で仕方ない。でも、あの2人が居ないといじめが起きない。」
教師の言葉にムカムカしながら距離を取り続ける2人の間を裂くように大きなチャイムが鳴り響く
水樹は急いで机の上に乗るとそのまま駆け出し、教室後方の鍵を開けると廊下へ飛び出した。
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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時