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石の階段をペタ…と裸足でのぼる足音。
横たわる水樹に近付くと、その場で膝を付き濡れた髪を撫でる
シャツもズボンも水分を含み、上半身は透けており腹のアザも綺麗に無くなっているのが確認出来た。
「…水樹…」
そう呟くと頬に手を滑らせゆっくりと顔を近づけて、水樹の薄い唇に自身の唇を触れさせた。
そんな行動を階段で足を止め、腕を組み壁に寄りかかって眺めていた2人。
「…副担やん。」
「最悪や」
小さく呟き、階段を降りて物陰に隠れる。
そのすぐ後に副担任の男は足早に校舎の方へと戻って行った。
その背中を目で追う2人、気に食わない様子だがまずは水樹の安否が心配だ。階段を駆け上がり、横たわったままの水樹に駆け寄った
「A!」
「Aくん」
目をつぶったまま返事をせず、まだぐったりとした様子の水樹。
剛がその薄い唇を親指で軽く擦り、先程の男の口付を無いものにした。
プールの水で手を洗い、ふと水樹の方を振り返りじっと顔を見つめる。
「…剛?」
日差しで眉をひそめ、目を細めながら水樹に近寄る剛をじっと見る光一。
魔が差した。
頭上に腰を下ろすと、顔を覗き込むように背を曲げそのまま薄い唇同士を触れさせる。
時間は10秒程度だっただろうか、顔を離しふと光一の方を見る剛。
「…つい。」
「ついって…」
「……目の前であんな事されてちょっとカッとなって」
そう言い訳を口にしている途中、光一も水樹の顔付近に近付くと背を曲げ剛と同様口付を。
あてられたか、自分の意思か。口を離すと満足そうに口角を上げて剛を見、「ふふ」と笑い声を漏らした。
「結局するんかい」
「副担も剛もやって俺だけやってないの、なんか不完全燃焼で」
「はは、なんやそれ。…ちょっと日陰行こか、涼ませなどうかなる」
水樹と3人で日陰に移動。
少しぼうっとしていると、「ぅ…」と小さい声が隣から。ふと横を見ると眉をひそめ、うっすらと目を開けた水樹の姿。
ホッと胸をなで下ろし、今の状況が分かるかと確認を取った。
「…あー…頭ぼーっとする…」
「まだ回ってへんのやろな、深呼吸して…あと水分補給も」
「教室行こう、そんで濡れたままも気持ち悪いと思うから体操着に着替えて」
2人に支えられ、アドバイスも受けながらプールから出ていく水樹と光一と剛。今は目の前の状況をどうにかするのが大事…だが、予想もして無い人物も現れ2人には吉と出るか凶と出るか。心に更に黒いモヤがかかる。
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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時