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#30. ページ30

静かに寝息を立ててぐっすりと眠っている剛。
その隣に丸椅子が置いてあり、腰を下ろすとじっと整った顔を眺め始めた

この間、彼が撫でてくれた様にお返しと心の中で呟きながら恐る恐る額から髪の毛へと手を滑らせる。
柔らかい髪の毛、サラサラと滑る綺麗な肌。


「…そら人気出るわなぁ…」


そう小さく呟き、手をすぐに離した。
小さく響く足音。ふと隣を見ると保健医が後ろに手を組んでじっと水樹を眺めている。「どうしたんですか」と言わんばかりに首を傾げ、濡れて纏まった髪を揺らす。


「…最初は2人が可哀想だなって思ってたんだけど、今は水樹くんが凄い可哀想。」


眉を八の字に下げ、水樹を心配してくれてはいるんだろう。
可哀想な子を見るような目でじっと見つめてくる保健医からふと目を逸らし、また剛の顔を眺め始めた水樹。


「あんま可哀想って言わないで。2人がどう思うかは知らんけど、俺は「偉い」「頑張ってる」って褒められた方が嬉しい」

「それは自分を追い詰めてない?」

「可哀想な子ぉなんや、ってネガティブに考えたくない。褒められてポジティブに変換して頑張ってたい」


「なぁ剛」と同意を求めるように呟き、静かに眠っている彼の手にそっと触れた。ピク、と触られ小さく反応したがまだ起きる様子はない。相当偏頭痛が辛かったのだろう。


「…我慢のし過ぎはダメだよ」

「我慢してない。」

「ポジティブ思考でしか物事を考えないのも自分も軽く見すぎてる。」

「そう変換しないとやっていけへんねん」


保健医と顔を合わせてずっと、関西のイントネーションが混ざっていたがなるべく標準で話そうと頑張っていた水樹。次第にその口調も崩れ、方言が所々に混ざってきている。

そんな水樹を見て、保健医は少しの沈黙の後にまた口を開いた。それだけ水樹の事が心配なのだろう、小さいため息をつくと背中を優しく励ますように何度もさする。


「わかったよ。でもね、耐えられなくなったらまたおいで。手当てもしてあげるし、洗ってあげるし、話も聞いてあげる」

「…ありがとうございます。」

「転校してまだ数ヶ月なのに偉いね。自分をしっかり持っててえらい」


しっかりと話を聞いてくれる良い先生なのだろう。その言葉が嬉しかったのか目の縁にじわじわと涙が溜まっていき、ホロリと1粒の涙が頬を伝う。
瞬きをすると長いまつ毛にも涙がくっつき視界がぼやけ、シャツの袖でぐしぐしと目元を擦った。

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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年8月11日 1時

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