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セットして短かった前髪は、下ろすと眉より少し下程の長さになりチラチラと視界に前髪の先が入っては消え、また入っての繰り返し
そんな水樹は新鮮なのか、隣に座る剛は自分達が強引にセットを崩し下ろした水樹の前髪にチョンチョンと軽く触れる。
「俺の髪触ってて楽しい?」
「ん、柔らかくて楽しい。ずっと触ってたいわぁ」
「そぉ?剛の髪も綺麗やし羨ましいで」
ふふ、と目尻に皺を寄せ柔らかく返事をした水樹。剛も彼の見せる笑顔が好きなのか、常に顔をほころばせている。
水樹の1つ前に腰を下ろしている光一。後ろ2人がイチャついているんだ、その輪の中に混ざりたくもなるだろう。
「楽しそうな事話してるやん」
「光一、Aくんの髪柔らかいねん。綺麗な髪してて、」
5時間目も終わりもうそろそろこの日最後の授業、という事で準備をし椅子の背もたれに体重を預け前方を眺めていた光一も我慢が出来なくなり後ろを振り返った。
「うわぁほんまや」と2人で水樹の少し長くなった前髪を指先でゆらゆらと触れる。
困ったような笑みを浮かべ、大人しく教師が来るまで楽しそうな2人を眺めていた。
5分もしないうちに教師が入ってくると、みんな姿勢を正し挨拶を始めた。
頬杖を付き授業を受ける者、大きな欠伸をしてウトウトしながらノートをとる者。見るからに不真面目そうな奴らがいるにも関わらず、毎回指名されるのは水樹だ。
「答えてみろ」
「…すみません、まだ解けてなくて」
「ッはー、本当バカは困るわ」
答えられないと明らかに不機嫌な態度になる教師。大きな溜息をつき、悪態まで吐いてダルそうにしている。
2回、3回と答えられずに居るとそれはもうひどい罵詈雑言が飛んでくる程にエスカレートしていた。
それを見て桐島や寺嶋等周りの人間は心底楽しそうな笑みを浮かべ、クツクツと小さい笑い声を漏らす。
この1時間だけで疲労感が目に見える水樹。机に突っ伏して「はあぁ…」と過去一大きいため息をついた。
「…Aくん、今日お家行ってもええ?」
「俺も、今日は習い事無いねん。…やっぱ疲れてる?」
「…いや、全然。来てええよ、なんも無い家やけど」
顔を上げて2人の顔を順に見ると、疲れ切った表情の水樹は「はは、」と乾いた笑いを漏らし了承した。
荷物を纏め、ホームルームを終わらせると3人一緒に教室から廊下に足を踏み出した。
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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時