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「先生、1枚足りません」
これで何度目だろうか。1時間目から4時間目まで全てプリントを使う授業だった
他の列は最後まで配られているのに、最後の水樹がいる列は光一の所でプリントが止まる。
その度に光一が毎回ヒラヒラとプリントを見せ、教師に伝えていた。
何処と無く教師の態度が水樹にだけ悪い。話しかけても口もきかない、そのクセ授業では毎回続けて使命をし、顔を合わせる度睨むような鋭い目で水樹を見ている。
「Aくん、なんか大変そうやね」
「ん?」
「ずっと指名続きやん。よぉ答えられるなぁ」
「めちゃくちゃ頭回転させてんねん、頭壊れそうやわぁ…」
昼、食堂へ3人で向かっている最中剛が水樹へと口を開く。
困ったように眉をひそめ、苦笑いを浮かべ返事をすると「無理はしたらあかんよ」と優しい言葉をかけてくれる。
いつもの様に食券を渡し、料理を受け取り2人の後ろを少し離れて歩いていると、ふと足がなにかに躓いた。
ふわりと体が宙に浮く感覚手から離れる料理の乗った定食。
そして一瞬で体も料理も床に叩きつけられた。
「ッ…ぃ"…」
ズキンズキンと腹に電気のような痛みが持続して走る。
顔を歪め、片腕で腹を押え蹲る。2人の後ろ、水樹の前にはひっくり返ってしまったカレー。
「その位でコケんなよ鈍くせぇな」
桐島でも寺嶋でもない、他クラスの人間が笑うと食堂の中にいた2人以外の生徒からドッと笑いが巻き起こる。
足を掛けたのだろう、トレイのせいで足元がよく見えずまんまと周りの人間の策にハマってしまった。
「A!」
「Aくん!大丈夫?」
2人はトレイを置くとすぐに水樹の元へと駆け寄った。そんな行動を見て周りの生徒は一斉に静まり返る。
注目は3人に集まり、光一はおばちゃんにティッシュを、剛は水樹の背をさすって安心させていた。
床に落ちたカレー、それをティッシュを使いゴミ箱へと捨てた。
「…最悪や」
「失敗は誰にでもあるで。大丈夫、安心しぃ」
「…ん、俺もっかい買うてくる。先食べててええよ」
グッと足に力を入れ立ち上がり、2人に背を向けてまた食券を買いに食堂の入口へと向かう水樹。足を掛けられた事に水樹は気付いていたんだろう。
悔しい気持ちをグッと堪え、もう一度カレーを頼んだ。「零してすみません」と謝ると、おばちゃんは優しく笑って「いいんだよ」なんて答えてくれる。
次は足をかけられる事もなく、2人の元へと戻って行った。
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yu - めちゃ良かったです (2022年11月17日 18時) (レス) id: b3f4a92def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2022年8月11日 1時