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とあるオフの日、柳瀬は喫茶店に居た。
目の前には昔ながらのパフェと、そして頬杖を付いて柳瀬をじっと眺める牧原の姿。
「俺で良かったの?」
「え?そりゃまぁ。良く無かったら呼んでませんし」
「…」
「…あ。すみません、奥さんと一緒に居たかったっすよね」
「そんな気の遣い方せんでも」なんて言う牧原の前で上に乗ったバニラアイスを口に運ぶ。
柳瀬は奥さんどころか彼女すらもいない為、オフの日はいつも1人か誰かを呼ぶ。先輩だろうが関係ないようで、今回は牧原が選ばれた。
「A、それ食べてるとなんか幼稚園児みたいやな」
「どういう事っすかぁ」
「そのままの意味」
「嬉しくないっすからね!」
ぶぅっと口を尖らせて言う柳瀬だが、そんな表情も相まって牧原の瞳には園児のようにしか映らなくなってしまった。
実際、パフェを食べている柳瀬は幸せそうで、無意識に顔が綻んでしまっている。そんな様子を見てからか、牧原もバニラアイスを注文すると手元に来るまで少し待っていた。
「野球と甘いもの、どっちが好き?」
いたずらに笑う牧原に問われると、眉をひそめながら手を止めて唸るように考え始める。
牧原のバニラアイスが来ても尚考え続ける柳瀬に、彼も「考えすぎやけん」なんて楽しそうに笑った。
「なん、なんでそんな2択を選ばせようとするんすか、悩むやん…」
「じゃあ俺と甘いもの」
「ほらそうやって悩ませようとする!でもこれはまきさんの方が好きっすよ、思った結果じゃなくて残念でしたぁ」
眉を下げて困った様子の柳瀬を見たかったのだが、自身と甘いものを比べると即答されてしまい、思わず牧原の口角が上がってしまった。
柳瀬は、困る姿を見られない牧原に対してそんな煽り方をするが、彼からしたら1番嬉しい答えとなってしまっていた。それに気付かないのは鈍感なのか、馬鹿なのか。
「ほんっと幼児」
「園児じゃなくなっとる」
「頭は2歳」
「うーわ、ひどいやまきさん」
カメラが無ければ表情豊かでかなりお調子者。この柳瀬を全世界に配信して、無表情の冷たいヤツなんて誤解を解きたいとも思ったのだが、それ以上に自分達にしか見せない柳瀬を世に放ちたくないという思いが大きくなってしまっていた。
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Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時