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5時間もあった対談は特番でノーカット放送され、トレンドを独占していた。
素の姿や野球への熱量などを知った人達の中には柳瀬への見方を変える人もおり、着実にアンチよりもファンの数を増やしていた。
試合前の選手サロン。
柳瀬は椅子に腰かけ、数枚の封筒を机に置いて1枚ずつ眺めていた。
長方形の、可愛らしい封筒。可愛らしい便箋。そして可愛らしい丸文字。
1人だった柳瀬を見つけたのは牧原だった。
手には便箋、テーブルには数枚の手紙。ふと強化試合の記憶、あの日の夜の嫌な記憶を思い出してしまい、牧原は黙って手紙を読む柳瀬に近付いた。
「…A…?」
名前を呼ぶと、目を真っ赤にさせた柳瀬が顔を上げて牧原の方を見る。しゃくりを上げて、便箋にシミを作って過呼吸気味に泣いていた。
「ま、まき、ま、っ、き、」
声も呼吸も震えており、"まきさん"という短い名前も言えずにいた。そんな柳瀬の様子に牧原は目を大きくさせ驚き、しゃがんで背中をさする。
「落ち着け、落ち着いて」
一緒に呼吸をさせて、何とか落ち着きを取り戻す。すると「まきはらさあ"あ"ん"」と大粒の涙を流して牧原の首に腕を回して正面から抱きつき肩に顔を埋めた。うええ、と子供のように泣く柳瀬の頭を撫でながら机に置かれた手紙を手にして文を読む。
便箋の内容は酷いもの…でも無くて、ただただ頑張ってと、応援してると、カッコイイ姿が大好きだと柳瀬への愛が綴られていた。
他の手紙も目を通すが全て柳瀬を応援しているものだった。
「っう"、うえ、うれしい"…初めて、始めてもらった、いちぐんなって、レギュラーなって、う、う"〜…」
しゃくりを上げながら泣き止まない。そんな彼を見て牧原はふっと笑みを見せると強く強く抱き締めて髪をぐしゃぐしゃにするように頭を撫でた。
「頑張ってたから、やっと世間がAについてきたんだよ。頑張った。えらい。」
「今日も打つぅ"…17号ホームランん"…そんで奪三振…」
「お前ハイペースだし連続とかやりそうだね」
あんなに叩かれていた状況でも、いつの間にか本塁打の数は16本。これから応援されていく様になるとどれだけの成績を残すのだろうか。
この日の試合、柳瀬はホームラン宣言で本当に先制3ランを放ち、ドーム内を湧かせた。
柳瀬の力を引き出すには手紙が1番効果的なのかもしれない。
───
END
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Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時